2010-01-01から1年間の記事一覧

3 × 5 と 5 × 3 は違う !?

5 枚の皿に 3 個ずつリンゴが乗っている。リンゴは全部で何個あるか。 という問題が、今議論を呼んでいるようです。指導要領的な解釈では、1 枚の皿に 3 個のリンゴが 5 皿あるから「3 × 5」と立式するのが正しく、「5 × 3」ではだめなのだそうですが、果た…

自然数から整数へ、そして有理数へ(その 3)

群 を単位半群(モノイド)とし、 を単位元とします。もし、次の法則が成り立つならば、 は群であると言います。 任意の に対し、 によって定まる の元 があって を満たす。 を の逆元と言います。 全変換半群と対称群 を集合とするとき、 から自身への写像の…

自然数から整数へ、そして有理数へ(その 2)

結合則と可換性、単位元 を代数系とし、 とします。また、 を と書きます。 が任意の について成り立つとき、この代数系は について結合的であると言います。特に が について結合的であるとき、 は について半群であると言います。 が任意の について成り立…

自然数から整数へ、そして有理数へ(その 1)

以前、集合論の公理系を用いて自然数の集合 を定義し、その上に加法と乗法という算法を定義しました(べき乗も定義しましたが、今回は特に使いません)。今回は、それを拡張して整数と有理数を構成してみます。 代数系 を集合とし、 を の部分集合とします(つ…

カオス現象(その 3・最終回)

いきなりですが次の画像をご覧ください。これは先程と同じ を、 を 3.8 から 3.9 まで 刻みで動かして同じように挙動を調べたものです。くっきりと 3 周期点が見えますね。実はこの周期 3 こそが全ての(とまでは言いませんが)正体です。一般に、離散力学系 …

カオス現象(その 2)

前回導き出した漸化式 がどんな挙動をするのか、論より証拠、次の画像を見てください。これは、初期値を として、横軸に を取り 0.001 刻みで動かし、十分大きい から先の の値を 100 個プロットしたものです。最初のうちはある値に収束していくことが見てと…

カオス現象(その 1)

… (*) という微分方程式を考えてみます。これは 1 階の微分方程式で変数分離形なので解析的に解くことができます。実際、初期値を とすると となります。ところで、(*) を Euler 法で近似的に解くことを考えてみましょう。微小の刻み幅 を固定して考えると …

有限値に収束するが、微分が収束しない関数

級の関数 があって のとき、直感的には になりそうな気がします。しかし とおくと生憎そうはなりません。 ですが で、 の項が収束しない(強制振動)ので、 とならないのです。直感に頼ると痛い目にあうという好例でした。

共分散の落とし穴

二つの確率変数 X , Y が独立なら、共分散 は 0 になりますが、共分散が 0 だからといって独立になるかというとそうではありません。例えば X を標準正規分布に従う確率変数とし、 とおきます。このとき なので ですが、明らかに X と Y は独立ではありませ…

三角関数の問題

は方程式 の解で とする. このとき の値を求めよ. という問題を某所で教えてもらったのでちょっと解いてみました。まず方程式を と変形し、 を満たす を用いて とします。 なので、これを満たすのは のみです。したがって となります。これを に代入すると …

f(x + y) = f(x) + f(y) を満たす関数

タイトルのような関数で連続なものは ( は定数)しかありませんが、連続の代わりに … (*) という条件を付けても同じ結果が得られます。まず、 ならば、 とおいて、任意の有理数 に対して となることが分かります。さて、(*) の条件を付け加えます。任意の実数…

三角加法関数展開形

を加法定理を用いて展開すると、 の 変数の多項式になりますが、その一般形を探ってみたら面白いのではないか、という話を、先日知り合いの方と話していました。例えば となります。一般に とすれば となるので、この漸化式をもとに一般形は求められそうな気…

待ち行列理論(その 7・最終回)

型待ち行列(まとめ) ランダム到着・ランダムサービス(客の到着間隔とサービス時間が共に指数分布に従う)における諸結果をまとめておきます。 ただし の意味 は と だけで表すことができます。実際 ただし となります。ところで は、「列に並び始めてからサー…

待ち行列理論(その 6)

型待ち行列(続き) が具体的にわかったので を具体的に求めてみましょう( の式の形に注意 !)。 はちょっと技を使います。 従って については、単一窓口の場合と同じくリトルの公式 が成り立つので が成り立ちます。 単一窓口のときと同様に が成り立っていま…

待ち行列理論(その 5)

型待ち行列 今度は窓口が複数の場合を考えてみましょう。そうすると、客の到着に関しては今まで通りですが、サービスの方が確率が若干変化します。すなわち、時刻 の間に一人のサービスが終わる確率は、窓口が複数であることから と変化します。一方で時刻 …

待ち行列理論(その 4)

型待ち行列(続き) さて、 とわかったところで を求めてみましょう。そのために一つ公式を用意しておきます。 のとき の両辺を について微分して 故に ゆえに さて、今度は待ち時間ですが、 は、客が到着してからサービスを受け始めるまでの時間であり、この…

待ち行列理論(その 3)

型待ち行列(続き) 微分方程式系 が のとき、 で平衡状態になると考え、 とします。 と考えられます*1から、平衡状態において が成り立ちます。第 2 式を変形すると となるので、第 1 式と合わせて , すなわち が成り立ちます。このことから となりますが、 …

待ち行列理論(その 2)

型待ち行列 まずは、最も基本的な 型待ち行列を解析してみましょう。時刻 の時点での系の長さが である確率を で表します。時刻 の時点で系の長さが 0 である確率 を求めてみましょう。以下の 4 パターンが考えられます。 時刻 の時点で系の長さが 0 で、時…

待ち行列理論(その 1)

これからしばらくは待ち行列理論にお付き合いいただきます。とりあえず独特の用語が多いので、最初に用語の定義だけしておきます。 平均到着間隔と平均到着率 客の到着間隔を確率変数と見たとき、その従う分布を到着分布と言い、その期待値を平均到着間隔と…

指数分布とポアソン分布(おまけ)

実は今まで話してきた指数分布のランダム性は、記憶の欠如と呼ばれる、次の性質が大きく関係しています。T を指数分布に従う確率変数とするとき が記憶の欠如です。待ち行列に絡めて話をすれば「次の客が来るまでの時間は、それまでの経過時間には影響されな…

指数分布とポアソン分布(後編)

客の平均到着率を とします。このとき、時刻 の間に到着する客の数は期待値 のある分布に従っているはずです。今仮に、それがポアソン分布であるとしましょう。その確率密度関数は … (*) です。最後の客が到着した時点から起算して、次の客が到着するまでの…

指数分布とポアソン分布(中編)

さて、客の到着がランダム(到着間隔が指数分布に従う)であるとき、前回の結果から、時刻 の間に到着する客の数 について が得られました。ここで、時刻 の間に 人の客が到着する確率を で表すことにすれば ですから と、微分方程式を立てることができます。 …

指数分布とポアソン分布(前編)

いま、ある窓口に客が次々と到着する状況を想定します。そして、その客の到着間隔が指数分布に従っているとします。指数分布の確率密度関数は をある定数として で、その期待値は です。*1現在時刻を とし、それ以前に最後に客が訪れた時刻を とします。この…

一様乱数の差の分布(後編)

二つの確率変数 (X, Y) の同時分布の確率密度関数 p(x,y) が分かっていると、今回の P(Y < X) のような確率は二重積分でも求められます。ちなみに X と Y が独立ならば、X の確率密度関数を f(x)、Y の確率密度関数を g(y) とするとき、(X, Y) の同時分布の…

一様乱数の差の分布(前編)

とある国家試験に次のような問題が出たそうです。 0 から 1 までの一様乱数から X と Y を取り出すことを 600 回繰り返す。このとき Y < X を満たす回数の期待値はいくらか。 実際には選択肢が与えられているので、勘で当てられなくもありませんが、ちょっと…

位相空間を様々な方法で定義する(その 7・最終回)

近傍系を与えることによる定義(続き) 示すべきことは です。まず とします。このとき なので は (*) を満たします。すなわち が成り立ちます。そして なので 2. により . 故に が成り立ちます。ここまで、近傍の性質の 2. と 3. しか用いてないことに留意し…

位相空間を様々な方法で定義する(その 6)

近傍系を与えることによる定義 今、 の各点 に対して、空でない の部分集合 が与えられていて、次の性質を満たすものとします。 全ての に対して . で ならば . ならば . 任意の に対して、次の条件を満たす が存在する : の任意の点 に対して . これらの性…

位相空間を様々な方法で定義する(その 5)

閉包作用子を与えることによる定義(別法) 閉包作用子を与えて位相を定める方法としては、別の方法があります。その前に、一般に X に開集合系が与えられているとして、次の事実を証明します。 定理 証明 だから は を含む閉集合である。 を閉集合で とする。…

位相空間を様々な方法で定義する(その 4)

閉包作用子を与えることによる定義 今度は閉包作用子を与えることによって、そこから閉集合系を再現してみましょう。閉集合系を再現できれば、自動的に開集合系を再現できるので、位相が定まります。まず閉包作用子の性質を見てみましょう。 ならば このとき…

位相空間を様々な方法で定義する(その 3)

開核作用子を与えることによる定義(続き) 先のようにして作られた開集合系から開核作用子を再現したとき、それが元のものと一致することを見なければいけません。さて、 は 2. そのものです。また 5. から がわかります。また、 ならば、 の定義と 3. から …