数学・代数

1 で終わる数による割り算

前回とは逆(?)に、今度は 1 で終わる数による割り算を考えます。1 で終わる数は一般に と書けます。 を計算してみます。まずは と書き換え、 … (*) と割り算します。 により です。この両辺を 10 倍して整理すると となります。計算で分かるように なので、(…

9 で終わる数で割る割り算

9 で終わる数字による割り算を考えます。9 で終わる数字は一般に と表せますので を計算することを考えます。 として問題ありません。まず と書き換えます。次に … (*) と割り算します。 の条件から が成り立ちます。この両辺を 10 倍して整理すると となり…

100 に近い数同士の掛け算

100 に近い数字同士を掛け算するときの上手い方法を数式を用いて説明してみたいと思います。 とおいて掛け算すると となります。ここに、 の部分は もしくは と書けます(すなわち両者は常に一致)。そこでこの値を とおいて となることが分かります。例えば …

三角加法関数展開形

を加法定理を用いて展開すると、 の 変数の多項式になりますが、その一般形を探ってみたら面白いのではないか、という話を、先日知り合いの方と話していました。例えば となります。一般に とすれば となるので、この漸化式をもとに一般形は求められそうな気…

続・円分多項式について

150 次まで調べましたが、やはり 以外の係数が現れるのは 105 次のみ。うーん…。

円分多項式について

サイトにアップしている円分多項式の表を 120 次まで追加しました。 以外の係数が出てくるのは 105 次だけでした。暇があったらもっと先、150 次くらいまで調べてみたいと思います。

p-群の性質

p-群の分類上重要な性質として p を奇素数とするとき、位数 の群が位数 の部分群をただ一つしか持たなければ、それは巡回群である というのがあって、証明がこちらの書籍に載っています。バーンサイド 有限群論 (現代数学の系譜 9)作者: W.S.BURNSIDE,吉田洋…

I 進位相

A を可換環とし、I をそのイデアルとするとき、 を 0 の基本近傍系とする位相が定まり、A はこの位相に関して、和・積ともに連続となる(位相環)。この位相のことを A の I 進位相という。また、M を A 加群とするとき、 を 0 の基本近傍系とする線型位相は和…

直角三角形の面積と楕円曲線の関係(その 3・最終回)

前回からの続きです。三つのステップのそれぞれを証明していきます。 (Step 1 の証明) が を満たせば、 も を満たし、かつ だから、 として良い。すると だから . (Step 2 の証明) とし と既約分数表示する。もし m , n がともに奇数とすると、 とおけば だ…

直角三角形の面積と楕円曲線の関係(その 2)

前回、辺の長さが有理数で、面積が d である直角三角形の存在と、楕円曲線 が 以外の有理点を持つこととが同値であることを示しました。 さて、こんな話をして、結局何が言いたいのかというと、目的は、Fermat が Diophantus「数論」の余白に書いた第 45 の…

直角三角形の面積と楕円曲線の関係(その 1)

今回は、直角三角形の面積と楕円曲線の間にある不思議な関係をご紹介します。 まず、三辺の長さが全て有理数である直角三角形を考え、その面積が d であるとします。そのような集合を とおきます。このとき と 三項は全て有理数の平方で、かつ公差が d であ…

Sylvester の方程式

m 次正方行列 A 、n 次正方行列 B 、 行列 C が与えられたとき、 行列 X に関する方程式 … (1) を Sylvester の方程式という。 であるから、この行列の (i,j) 成分における の係数は である。そこで に新しい順序を で定義する。すなわち でもって に順序を…

Noether 環は、それを係数とする多項式環と同型ではない

いろいろな人からヒントをいただいたりアドバイスをいただいたりしましたが、最終的にぽけっとさんのアドバイスが決定打になって、ようやく解決しました。しかし、準同型定理を失念するとは衰えた…。A を Noether 環とし、A 係数の多項式環を A[X] とする。 …

LU 分解(後編)

一般の行列の LDU 分解 一般の 行列 A に対して、正則行列 S と 置換行列 があって と出来ることは周知の事実である。ただし B は次数が r (= rank A) で対角成分が全て 1 である上三角行列である。今、 に対して LDU 分解 を行うと となる。 とおく。ただし…

LU 分解(前編)

正則行列の LU 分解(その 1) を n 次正則行列とする。このとき、 の中で 0 でないものが少なくとも一つ存在するので、A に右から置換行列 を掛けて、一般性を失うことなく として良い。そこで とおく。ただし である。すると となるので、この行列から 1 行…

イデアル類

の有限次代数拡大体 L のことを代数体と言うが、このとき、L の中で の整閉包 R を考えると、これは Dedekind 環となることが知られている。これを L の整数環と言う。 L の整数環 R の二つのイデアル I , J について が成り立つとき と定義する。これは明ら…

複素数の平方根

Java で複素数を扱いたくて、その平方根を計算させるためにどうするのが一番良いか、と考えていたときに思いついたことをメモしておきます。 を与えられた複素数として が成り立つように実数 x , y を定めるには、連立方程式 を解けばよい。しかるに である…

四分円の重心

上図の半径が a の四分円の重心(赤い点の部分)を、幾何的、もしくは代数的に求められるか、という問題に対して、私なりの「No」という考えを記しておきます。答から言うと、この四分円を y 軸を中心に回転させれば、Pappus-Guldinus theorem により、重心の …

一般逆行列(その 7・最終回)

さて、 における Moore-Penrose 形一般逆行列については、A の特異値分解 (ただし を用いれば、明らかに が Moore-Penrose 形の一般逆行列になる。このことから Moore-Penrose 形一般逆行列がほとんど一意に定まることがわかる。 Moore-Penrose 形一般逆行列…

一般逆行列(その 6)

特異値分解(特異値標準形) 結論から言うと、 行列 A に対して n 次の unitary 行列 と m 次の unitary 行列 があって , ただし (r = rank A) で と書ける、という主張で、このときの を A の特異値分解という。 今、 は n 次の Hermite 行列であるが、 が定…

一般逆行列(その 5)

最小誤差形一般逆行列 線型写像 において、今度は に で計量を与えて計量空間とする。 のとき、 に対して( でも良い !)、 が最小なものを考える。 前回同様、 行列 A の QR 分解 (P は置換行列)を作る。ただし で、 (i = 1 , … , r , j = 1 , … r) は上三角…

一般逆行列(その 4)

ようやく一般逆行列の話に戻ります。 最小ノルム形一般逆行列 線型写像 において には で計量を与えて計量空間とする。 のとき、 に対して を満たすもののうち が最小なものを考える。 行列 の QR 分解 (P は置換行列)を作れば と表せる。ただし () は下三角…

Hom の左完全性の逆について(その 4)

ちょっと coffee break. 鎖複体 において、任意の左 R - 加群 N に対して双対鎖複体 が考えられる。Hom の左完全性の逆とはすなわち ということである。一般に任意の R - 加群 N に対して だから、 から はすぐわかる。したがって後示すことは である。 今 R…

一般逆行列(その 3)

QR 分解(一般形) A を 行列、 とします。このとき、m 次の正則行列 S と n 次の置換行列 P があって と書けます。ただし、B は対角成分が 0 でないような r 次の上三角行列。 ここで、 を QR 分解(後述)して と表せたとします。ただし Q は m 次の unitary …

一般逆行列(その 2)

Hausholder 行列 は か を表すものとする。 が を満たすとき ( は単位行列) とおく。このとき明らかに 、すなわち は Hermite 行列である。また だから、 は unitary 行列でもある。この のことを Hausuholder 行列という。 が成り立つ。今、 を満たす に対…

一般逆行列(その 1)

を 行列 A で与えられる線型写像とする。 とおけば は の r 次元部分空間 は の (n - r) 次元部分空間 である。そこで の補空間 の補空間 を各々一つ取って固定し、 の基底も各々一組取って固定しておく。 の基底として、上述の の基底と の基底を合併したも…

有限次元ベクトル空間の部分空間に対する補空間の取り方の自由度(続き)

V , W は前述のとおりとする。もう一つの考え方として、W の補空間 W' の基底 を一つ固定するとき、商空間 V/W の基底は と書ける。このとき、各 の代表元の取り方によって W の補空間が決まる。その選び方の自由度は (W の (n - r) 個の直積)だけあるから、…

有限次元ベクトル空間の部分空間に対する補空間の取り方の自由度

V を有限次元ベクトル空間()とする。その r 次元部分空間 W を取るとき となる V の (n - r) 次元部分空間 W ' が存在する(補空間)が、この取り方は一意ではない。そこで、W ' の取り方にどれだけの自由度があるか考察してみる。まず、W の基底を とし、これ…

Hom の左完全性の逆について(その 3)

前回の続きです。(定理 2 の証明続き) 十分性について (i) が全射であること とおき、自然な準同型 を考える。このとき である。 は単射だから、これより となり、、すなわち を得る。 (ii) であること 任意の に対して である。よって特に とおけば を得る…

Hom の左完全性の逆について(その 2)

さて、Hom の左完全性にはもう一つの形があります。 定理 2 左 R - 加群 M , M ' , M '' と準同型 が与えられたとき、 が完全となるための必要十分条件は、任意の左 R - 加群 N に対して が完全となることである。(証明) 必要性について (i) が単射であるこ…