有限次元ベクトル空間の部分空間に対する補空間の取り方の自由度

V を有限次元ベクトル空間(\dim V=n)とする。その r (r\leq n) 次元部分空間 W を取るとき
V=W\oplus W'
となる V の (n - r) 次元部分空間 W ' が存在する(補空間)が、この取り方は一意ではない。そこで、W ' の取り方にどれだけの自由度があるか考察してみる。

まず、W の基底を
\langle\mathbf{v}_1,\dots,\mathbf{v}_r\rangle
とし、これを基に
\langle\mathbf{v}_1,\dots,\mathbf{v}_r,\mathbf{v}_{r+1},\dots,\mathbf{v}_n\rangle
が V の基底となるように選べば、
\langle\mathbf{v}_{r+1},\dots,\mathbf{v}_n\rangle
が W ' の基底となる。
もし V=W\oplus W'' となる別の補空間 W '' があったとする。このとき、同じように V の基底を
\langle\mathbf{v}_1,\dots,\mathbf{v}_r,\mathbf{v}_{r+1}',\dots,\mathbf{v}_n'\rangle
と取れば、V の基底変換行列
\left(\begin{array}E_r&*\\O&A\end{array}\right)
が作れる(A は (n - r) 次正則行列)が、ここで W ' の基底を取りかえることで、この基底変換行列は実質
\left(\begin{array}E_r&D\\O&E_{n-r}\end{array}\right)
と書きかえることができる(D は任意の r\times(n-r) 行列)。
したがって、W の補空間の取り方の自由度は、この D の分だけあると考えられる。