2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

公理的集合論における自然数の存在(その 13・最終回)

有限集合の要素の個数と自然数の演算 さて、 が有限集合で、 であるとき、実は以下のことが成り立つことが示されます。 、等号は のとき成り立つ。 証明は、いずれも後で紹介する参考書に略解が載っていますので、そちらを参考にしてください。かくして、自…

公理的集合論における自然数の存在(その 12)

べき乗に関する性質 べき乗に関する性質として (1) (2) を挙げておきます。いずれも証明は数学的帰納法を用いますが、もう同じようなことを何度も繰り返すのも面倒なので、定義に基づいて各自で確かめてみてください。 全単射と集合の対等 単射・全射といっ…

公理的集合論における自然数の存在(その 11)

1 から始まる数学的帰納法 これまで用いてきた数学的帰納法は 0 から始まるものでした。しかし、数学的帰納法は、必ず 0 から始まるとは限りません。むしろ、高校で習った(人もいる)ように、1 から始まる場合の方が多かったりします。そこで、そのような場合…

公理的集合論における自然数の存在(その 10)

積に関する性質 今度は積に関する性質を見ていきましょう。 (1) は定義からわかりますので、 を数学的帰納法で示しましょう。 は定義から直ちにわかります。 なので となりますから、数学的帰納法により です。 (2) は定義と和の性質から導かれます。 を数学…

公理的集合論における自然数の存在(その 9)

和に関する性質 前回定義した自然数の和に関する性質を見ていきます。 (1) なので、 となることを数学的帰納法で示します。まず です。次に とすると となって が成り立つので、数学的帰納法により となります。これは、 が恒等写像であることを意味していま…

公理的集合論における自然数の存在(その 8)

和・積・べき乗の定義 さて、前回証明した帰納定理を使うと、 と で定まる写像 に対して を満たす写像 が一意的に定まります。この のことを と書き、 と の和と言います。 さらに、この に対して を満たす写像 が一意的に定まります。この のことを または …

公理的集合論における自然数の存在(その 7)

いよいよ自然数の演算を再現します。なお、公理的集合論においては、通常は集合を現すのにアルファベットの小文字を使用するのが慣わしですが、煩雑さを避けるため、大文字等も使用することにします。 帰納定理 定理(帰納定理) とし、 とする。さらに写像 が…

公理的集合論における自然数の存在(その 6)

整列集合 を順序集合とし、 を順序関係とします。以下、面倒なので であるとき と表し、「順序集合 」と書くことにします。 さて、順序集合 の部分集合 に対し、 を満たす が存在するとき、これを の最小元と言い、 と表します。 が全順序集合で、(ただし ) …

公理的集合論における自然数の存在(その 5)

自然数の大小 いよいよ自然数の大小関係を再現します。その前に が成り立つことに注意します。実際 ならば前回の補題により なので となります。また、このことから直ちに が成り立つこともわかります。 さて とおいて、 が任意の自然数 について成り立つこ…

公理的集合論における自然数の存在(その 4)

いよいよ、自然数に大小を定義したいのですが、その前に、一つ補題を示します。 補題 任意の自然数 について *1 (証明) とおく。 と はともに偽だから、 はともに真。 を示す。 ならば である。 ならば により であるから、 により、いずれの場合も が成り立…

公理的集合論における自然数の存在(その 3)

Peano の公理 これから自然数にいろいろな構造を入れていく上で重要な、Peano の公理について説明します。 (P1) に対してある が確定する。 これは写像 が定まっている、とも言い換えられます。 のことを と書いているわけです。 (P2) これは、(P1) で定まっ…