公理的集合論における自然数の存在(その 13・最終回)

有限集合の要素の個数と自然数の演算

さて、a,b が有限集合で、|a|=m,|b|=n であるとき、実は以下のことが成り立つことが示されます。

  1. |a\cup b|\leq m+n、等号は a\cap b=\emptyset のとき成り立つ。
  2. |a\times b|=mn
  3. |a^b|=m^n

証明は、いずれも後で紹介する参考書に略解が載っていますので、そちらを参考にしてください。かくして、自然数の演算と集合の要素の個数との整合性が確かめられます。

自然数の演算は二項演算である

一般に a,b,c を集合とするとき (a^b)^c\approx a^{b\times c} が成り立ちます。我々は、与えられた a\in\omega に対して和 \alpha_a\in\omega^\omega と積 \mu_a\in\omega^\omega を定義しました。これは \omega から \omega^\omega への写像を与えたことと同じです。従って、(\omega^\omega)^\omega\approx\omega^{\omega\times\omega} により、結局我々は

  • \alpha:\omega\times\omega\ni\langle a,b\rangle\to a+b=\alpha_a(b)\in\omega
  • \mu:\omega\times\omega\ni\langle a,b\rangle\to ab=\mu_a(b)\in\omega

という(可換な)二項演算を定義したのと同じことをやったことになります。

最後に

今回の連載に当たって参考にした書籍を紹介します。省略した事項など、詳しいことはこちらの書籍を参考にしてください。

集合と位相 (岩波基礎数学選書)

集合と位相 (岩波基礎数学選書)

同書には、自然数からさらに整数へ、有理数へ、そして実数へ、という一連の流れが、全て書かれています。