分数回の微積分 !?(前編)

今回は、分数回の微積分と呼ぶにふさわしい作用素を紹介します。

使用する函数空間

-\infty<a<b\leq\infty とします。そして、今後使用する二つの函数空間を定義しておきます。
(1) L^1_{loc}[a,b)
u\in L^1_{loc}[a,b) であるとは、任意の c\in[a,b) に対し \int_a^c|u(x)|dx<\infty が成り立つこととします。
(2) AC_{loc}[a,b)
a\leq c<b なる任意の c に対して、[a,c)絶対連続となる函数の空間です。Radon-Nikodym の定理により、u\in AC_{loc}[a,b) であるとは u'\in L^1_{loc}[a,b)
u(x)=u(a)+\int_a^xu'(y)dy(a\leq x<b)
となるものが存在することと同値です。

Riemann-Liouville 積分作用素

u\in L^1_{loc}[a,b)\alpha>0 に対し
I_a^\alpha u(x)=\frac{1}{\Gamma(\alpha)}\int_a^x\frac{u(y)}{(x-y)^{1-\alpha}}dy(a<x<b)
と定義します。この I_a^\alphaRiemann-Liouville 積分作用素と言います。明らかに
I_a^1 u(x)=\int_a^xu(y)dy(a<x<b)
ですから、I_a^1a を基点とする積分作用素です。また、簡単な計算で
\begin{align}(I_a^1)^n u(x)&=\frac{1}{(n-1)!}\int_a^x (x-y)^{n-1}u(y)dy\\&=I_a^n u(x)\end{align}
がわかるので、I_a^nn積分と呼ぶにふさわしい作用素であることがわかります。従って、I_a^\alpha\alpha積分と呼ぶにふさわしそうな気がしてきます。実際に、以下の定理(証明略)が成り立つことから、それは正当化されます。

定理
u\in L^1_{loc}[a,b) ならば任意の \alpha>0 に対して I_a^\alpha u\in L^1_{loc}[a,b) であり、任意の \alpha,\beta>0 に対して I_a^\alpha I_a^\beta u=I_a^{\alpha+\beta}u が成り立つ。

以上のことから、Riemann-Liouville 積分作用素は、実際に「分数回積分」と言われることもあります。