数学・解析

円周率を解析的に定義する(後編)

長くなりそうなのでセクションに分けていきます。 指数関数と指数法則 級数 の収束半径は無限大です。そこで任意の に対して と定義します。 とおくと、任意の実数 に対して が成り立つため、複素数 に対しても と書きます。ここで大事なことは、指数法則 が…

円周率を解析的に定義する(前編)

円周率の解析的な定義はいろいろあって、以前も一つ紹介しましたが、ここでは別な方法を紹介します。1. 次の二つの級数の収束半径は無限大である。 証明はそれほど難しくないので割愛します。この事実を利用して、任意の に対して と定義します。2. のとき …

カオス現象(その 3・最終回)

いきなりですが次の画像をご覧ください。これは先程と同じ を、 を 3.8 から 3.9 まで 刻みで動かして同じように挙動を調べたものです。くっきりと 3 周期点が見えますね。実はこの周期 3 こそが全ての(とまでは言いませんが)正体です。一般に、離散力学系 …

カオス現象(その 2)

前回導き出した漸化式 がどんな挙動をするのか、論より証拠、次の画像を見てください。これは、初期値を として、横軸に を取り 0.001 刻みで動かし、十分大きい から先の の値を 100 個プロットしたものです。最初のうちはある値に収束していくことが見てと…

カオス現象(その 1)

… (*) という微分方程式を考えてみます。これは 1 階の微分方程式で変数分離形なので解析的に解くことができます。実際、初期値を とすると となります。ところで、(*) を Euler 法で近似的に解くことを考えてみましょう。微小の刻み幅 を固定して考えると …

有限値に収束するが、微分が収束しない関数

級の関数 があって のとき、直感的には になりそうな気がします。しかし とおくと生憎そうはなりません。 ですが で、 の項が収束しない(強制振動)ので、 とならないのです。直感に頼ると痛い目にあうという好例でした。

三角関数の問題

は方程式 の解で とする. このとき の値を求めよ. という問題を某所で教えてもらったのでちょっと解いてみました。まず方程式を と変形し、 を満たす を用いて とします。 なので、これを満たすのは のみです。したがって となります。これを に代入すると …

f(x + y) = f(x) + f(y) を満たす関数

タイトルのような関数で連続なものは ( は定数)しかありませんが、連続の代わりに … (*) という条件を付けても同じ結果が得られます。まず、 ならば、 とおいて、任意の有理数 に対して となることが分かります。さて、(*) の条件を付け加えます。任意の実数…

位相空間を様々な方法で定義する(その 7・最終回)

近傍系を与えることによる定義(続き) 示すべきことは です。まず とします。このとき なので は (*) を満たします。すなわち が成り立ちます。そして なので 2. により . 故に が成り立ちます。ここまで、近傍の性質の 2. と 3. しか用いてないことに留意し…

位相空間を様々な方法で定義する(その 6)

近傍系を与えることによる定義 今、 の各点 に対して、空でない の部分集合 が与えられていて、次の性質を満たすものとします。 全ての に対して . で ならば . ならば . 任意の に対して、次の条件を満たす が存在する : の任意の点 に対して . これらの性…

位相空間を様々な方法で定義する(その 5)

閉包作用子を与えることによる定義(別法) 閉包作用子を与えて位相を定める方法としては、別の方法があります。その前に、一般に X に開集合系が与えられているとして、次の事実を証明します。 定理 証明 だから は を含む閉集合である。 を閉集合で とする。…

位相空間を様々な方法で定義する(その 4)

閉包作用子を与えることによる定義 今度は閉包作用子を与えることによって、そこから閉集合系を再現してみましょう。閉集合系を再現できれば、自動的に開集合系を再現できるので、位相が定まります。まず閉包作用子の性質を見てみましょう。 ならば このとき…

位相空間を様々な方法で定義する(その 3)

開核作用子を与えることによる定義(続き) 先のようにして作られた開集合系から開核作用子を再現したとき、それが元のものと一致することを見なければいけません。さて、 は 2. そのものです。また 5. から がわかります。また、 ならば、 の定義と 3. から …

ある定積分と ζ(2)

ちょっとコーヒーブレイクを。 とします。 ですが、ここで と置換すると , すなわち となります。そこで両辺の が 1 から までの和をとって となるので と、 関数が 関数と定積分で表せます。ここで とおけば .

位相空間を様々な方法で定義する(その 2)

開核作用子を与えることによる定義 開核作用子は以下の性質をもつものでした。開核作用子の与えられた空間を とします。 ならば そこで、 の開集合系 を で定義します。これが開集合系の定義を満たすことを示します。まず 1. により であり、2. から なので …

位相空間を様々な方法で定義する(その 1)

一般に、現代数学では位相空間を定義する際に開集合系を与えるのが慣例になっていますが、それ以外の方法でも位相空間を定義できることを以前お話ししました。今日からしばらくは、それらが全て同等であることを見ていきます。 閉集合系を与えることによる定…

距離空間から位相空間へ(その 7・最終回)

最後に、写像の連続性について見てみます。 距離空間 に対し とおくと、写像 が で連続であるとは のことでした。これを書き直すと となり、基本近傍系を用いて と一般の位相空間に一般化できます。さらに基本近傍系の性質から と一般化しても同じことである…

距離空間から位相空間へ(その 6)

基本近傍系 前回、近傍系(= 近傍の全体) を定義しましたが、これに対する基本近傍系 とは、任意の に対して となる が存在するものを言います。例えば を含む開集合の全体 距離空間 における などが基本近傍系になります。一般に基本近傍系は 全ての につい…

距離空間から位相空間へ(その 5)

内部作用子、閉包作用子による位相の定義 位相空間における集合の内部と閉包について述べましたが、逆に、内部の性質 2 〜 4*1を満たすような、集合 M に を対応させる作用子(内部作用子)を定めることで、やはり位相空間が得られます。そのとき、開集合は内…

距離空間から位相空間へ(その 4)

位相空間における内部と閉包 位相空間 X の任意の部分集合 M は必ず なる開集合を含みます。したがって、M に含まれるありとあらゆる開集合の和集合というものを考えることができます。これが M に含まれる最大の開集合であることは異論がないでしょう。これ…

距離空間から位相空間へ(その 3)

事態を一般化して、集合 X の部分集合の系で、次の性質をみたす集合系 が与えられていたとしましょう。 ならば ならば このような集合系 が与えられた集合 X を位相空間といい、 を X の開集合系と言います。また、 の要素であるような X の部分集合のことを…

距離空間から位相空間へ(その 2)

開集合の性質 距離空間 X の開集合には次の著しい(?)性質があります。 は開集合 が開集合ならば も開集合 が開集合ならば も開集合 が開集合なのは約束事とも言えますが、定義からも示せます。残る二つの性質を示すのは難しくないでしょう。 閉集合が開集合…

距離空間から位相空間へ(その 1)

今回は、距離空間の性質を一般化して位相空間を定義する方法を見ていきます。 距離 X を集合とするとき、 が距離であるとは (三角不等式) が成り立つことを言います。距離 d が与えられた集合 X を距離空間といいます。例えば、実数や複素数なら絶対値を用い…

加群の完備化(help)

前回の記事、自分で書いておいてアレですが、かなり怪しいです。「完備化」と称して定義したものが本当に完備なのか、全く分かりません。そもそも、自然な写像 が連続なのかどうかも分からないし、さらに が で稠密であることも示せていません。 どなたか、…

加群の完備化

A を可換環とし、M を A 加群、 を有向集合、 を M の部分 A 加群の族で が成り立っているものとする。このとき の基本近傍形を にとることで M が位相群となることは前回示したが、ここで ならば、自然な群準同型 が存在するから、A 加群の射影系 が存在す…

位相群の基本近傍形について

G を群、 を有向集合、 は G の正規部分群の族で を満たしているものとする。このとき任意の に対して だから、単位元 の基本近傍形を と定めれば、G は位相群になる。このとき、各 は開集合になる。なぜならば、 ならば だから *1 となるから。一方で、各 …

面積保存型写像の軌道

面積保存型写像による力学系 において、初期値をいろいろと取り換えた時に現れる様々な閉軌道です。自己交差するもの、いくつかの閉軌道に分かれるものなど様々です。また、自己交差するものについては、その自己交差している点の付近は厳密にはぼやけている…

複素 Newton 法が生み出すフラクタル

の解を複素 Newton 法で求めるとき、初期値によってどの解に収束するかを色分けで示したのが上の図。1 に収束するのがマゼンタ、 に収束するのがシアン、 に収束するのが緑。Java で作りましたが、綺麗に出来ました。

ε - δ 論法(その 15・最終回)

合成関数の連続性 一般に , のとき、 となるとは限りません。実際、f(x) として恒等的に 0 であるものを取り とすると、明らかに任意の に対して であり、また ですが、 は恒等的に 1 なので となってしまいます。これは g が y = 0 = f(a) で連続でないがゆ…

ε - δ 論法(その 14)

相変わらず変数、関数値ともに実数の場合で考えます。 極限の四則演算 定理 1 とし、b , c は有限の値とする。このとき (証明) いずれも以下の不等式および等式から明らか。 b , c は有限の値としましたが、これは例えば のときの などは となって、いわゆる…