分数回の微積分 !?(後編)

Riemann-Liouville 微分作用素

前回定義した Riemann-Liouville 積分作用素は、ある種の積分方程式を考える上で現れたものです。そこで、その積分方程式を解く意味で、Riemann-Liouville 積分作用素の逆作用素を考える必要があります。
0<\alpha<1 とします。このとき、前回紹介した定理により I_a^{1-\alpha}I_a^\alpha u=I_a^1 u ですから、これに左から「微分作用素 D=\frac{d}{dx} を作用させれば
DI_a^{1-\alpha}I_a^\alpha u=DI_a^1 u=u
になると期待されます。そこで
D_a^\alpha u(x)=DI_a^{1-\alpha}u(x)=\frac{1}{\Gamma(1-\alpha)}\frac{d}{dx}\int_a^x\frac{u(y)}{(x-y)^\alpha}dy
と置いて、これを Riemann-Liouville微分作用素と言います。
さて、D_a^\alpha がいかなる函数に対して意味を持つか、が重要なのですが、「微分作用素 D を Radon-Nikodym 微分の意味に取ることで、この作用素は任意の u\in AC_{loc}[a,b) に対して意味を持つことが知られています。従って、f\in AC_{loc}[a,b),0<\alpha<1 ならば、積分方程式
I_a^\alpha\varphi=f
\varphi=D_a^\alpha f という形で解けることになります。D_a^\alpha は、まさに「\alpha微分」と呼ぶにふさわしい作用素なのです。

実例

u(x)=x,a=0,b=\infty として、実例を計算してみると
\begin{align}I_0^{1/2}x&=\frac{1}{\Gamma(1/2)}\int_0^x\frac{x}{\sqrt{x-y}}dy\\&=\frac{x^{3/2}}{\sqrt{\pi}}\int_0^1 t(1-t)^{-1/2}dt\\&=\frac{B(2,1/2)}{\sqrt{\pi}}x^{3/2}\\&=\frac{4}{3\sqrt{\pi}}x^{3/2}\end{align}
\begin{align}D_0^{1/2}x&=DI_0^{1/2}x\\&=D(\frac{4}{3\sqrt{\pi}}x^{3/2})\\&=\frac{2}{\sqrt{\pi}}\sqrt{x}\end{align}
となります。これをグラフにするとこのような感じです。

(青 : x、赤 : I_0^{1/2}x、緑 : D_0^{1/2}x)
なるほど、雰囲気は出ているような気がしますね。