2006-01-01から1年間の記事一覧

集合論の公理系(その 9)

どうも。仕事が忙しいのでまたまたご無沙汰してしまいました。ここからは、再び公理系の紹介に戻ります。 無限公理 無限公理 この a は を要素として含み、そのことから を要素として含みます。そして、そのことから を要素として含み…というように、無限*1…

集合論の公理系(その 8)

今回は、前回の公約どおり、ここまでの公理系を用いて示すことが出来る集合の性質を見て行きます。 部分集合に関する性質 証明は簡単なので、結論のみ。 和集合に関する性質 (i) (証明) (ii) (証明) 対公理により 最後の同値は (i) による。 空集合に関する…

集合論の公理系(その 7)

ここまでは、与えられた集合に対して、新たな集合を作ることが出来る、という公理が中心で、具体的な集合の存在には言及していませんでした。しかし、今度の公理は、具体的な集合の存在に言及している、という意味では、他の公理とは大きく性質が異なります…

集合論の公理系(その 6)

和集合公理 和集合公理 この公理は、与えられた「集合からなる集合」に対して、それらの集合の要素を全ての要素とする集合(和集合)の存在を主張します。このような y はやはり一意的に定まり、それを で表します。特に のことを と書きます。 べき集合公理 …

集合論の公理系(その 5)

対公理 対公理 外延公理により、このような集合 z はただ一つしかありません。この公理によって x , y が与えられたときにその存在が保証される集合を と書きます(対集合)。特に のことを と書き、x のシングルトン(singleton)と言います。定義より直ちに が…

集合論の公理系(その 4)

さて、先刻の予告どおり、集合論の公理系の紹介を再開します。前回から一週間開きましたが、記号論理には慣れていただけたでしょうか ? 外延公理 外延公理 ここで、本来は x , y も全称記号で閉じて と書くべきですが、それを省略して書いています。こういっ…

Bessel 型の微分方程式に…

なる微分方程式を、Bessel 型の微分方程式に帰着させる計算をひたすらゴリゴリ。ヒントは とのこと。 まず、1 時間くらい計算してみる。…合わない。どうやっても合わない。「ヒント間違ってんじゃねぇかゴルァ」と叫びたいところを抑えて…。 「マァ茶でも飲め …

集合論の公理系(その 3)

何事も練習ですので、ここで述語論理の公理系を用いる練習を二つほどやっておきましょう。 練習 1. 公理 2 を以下の形に書き換えます。 公理 3 とモーダス・ポーネンスから … (1) です。また、再び公理 2 を書き換えて … (2) です。公理 4 を書き換えて また…

集合論の公理系(その 2)

集合論の公理系をやる前に、述語論理の公理系を先に述べておきます。 一階述語論理の公理系と推論規則 一階述語論理は、以下の公理系と推論規則を持ちます。 公理系 ただし t は定数記号、あるいは x 自身、もしくは、x とは異なる変数 y であって、限定作用…

集合論の公理系(その 1)

前回までで圏論を軽く(?)紹介しましたが、ここで改めて(?)、集合論を公理的に見直してみましょう。今回は準備に留め、本格的に公理系を述べるのは次回以降にしたいと思います。 記号系と形成規則 今、集合論を公理的に扱うために、いくつかの記号を用意しま…

圏論への誘い(その 14・最終回)

部分圏の極限 が の部分圏であるとき、包含関手 の極限・余極限をそれぞれ と表すことにします。 極限・余極限の例 最後に、いくつかの極限・余極限の例を挙げて、この話題を締めくくりたいと思います。 0 を空圏(対象も射も存在しない圏)とします。これは任…

圏論への誘い(その 13)

左随伴と右随伴は双対である 関手 が与えられたとき、それは反変関手 を与えますが、(すなわち )、(すなわち ) に対して とは のことですから です。同様に なので となり、結局(共変)関手 が与えられたことになります。 さて、 が の左随伴関手であるとき、…

圏論への誘い(その 12)

圏 今、集合からなる集合*1 V の全ての要素を対象とし、それら集合間の全ての写像を射とする圏を考えることが出来ます。これを で表します。V がユニバースであるとき、 です。一般には、V を固定して考えないので単に と書きます。これはある固定された圏で…

円積問題

さて、前回 が超越数であることを証明しました。この事実から、「与えられた円と同じ面積の正方形を作図すること」という作図問題の不可能性が証明できます。 与えられた円の半径は、仮に 1 であるとして問題ありません。すると、与えられた円の面積はちょう…

π の超越性(後編)

続きです。ここから先は、e の超越性を示すために用いた二つの補題が使えます。 素数 p を とし、 とおきます。 と書けることに注意。前回の最後の (2) 式に を掛けて補題 1 を使うと となります。ただし です。まず と表せます。ここに は の対称整多項式だ…

π の超越性(前編)

次は の超越性です。それを示す前に、下準備をしておきます。 を整係数の方程式 の根の全体とするとき、解と係数の関係から分かることとして、 の任意の対称整多項式は の整多項式であり、従って整数となることに注意します。 さて、 が代数的であるとすると…

e の超越性(後編)

続きです。 補題 2 、f(x) を x の整多項式とし、 とすると、 は整数で、 (証明) は整数で とすると より であるが、 のとき は m の倍数であるから である。同様に より が成り立つ。 いよいよ e の超越性を示します。e が超越数でなければ、 と なる整数 …

e の超越性(前編)

まず始めに なる記号を導入しておきます。これは「h の r 乗」ではなく、あくまでも記号であることに注意してください。また、多項式 に対して と定義します。また と定義します。 ならば です。 さて、 に対し と定義します。このとき簡単な計算で が分かり…

今後の方針など

目下のところ、皆さんに圏論を紹介すべく記事を書いてきましたが、ここでまた小休止を入れて、明日と明後日で Napier の定数 と の超越性の話をしたいと思います。 実を言うと、それの参考にする予定で借りてきた本の返却期限が 3 日後に迫ってるんです(^^;)

圏論への誘い(その 11)

関手の例 基本群 基点付き位相空間とその間の連続写像からなる圏 を考えます。この圏の対象は、位相空間 X と、その基点 からなる組 で、射 とは、f が連続写像でかつ であるもののことを言います。 このとき、 に対して、その基本群 を対応させることは、圏…

圏論への誘い(その 10)

いよいよ二つの圏を結びつけるもの・関手(functor)を定義します。 共変関手・反変関手 圏 に対して、 に対して を、また、 に対して を対応させるもので を満たすものを から への共変関手(covariant functor)と言います。また、二つ目の条件を に変えたもの…

圏論への誘い(その 9)

圏論に戻ります。 双対圏 圏 が与えられたとき、その双対圏(dual category)(もしくは逆圏(opposite category)) を、以下のように定義することができます。 まず、 の対象とは の対象です。そして、 のとき で定義します。つまり、 における a から b への射…

買いたいけど…

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Riemann の zeta 関数(その 3・最終回)

の積分表示と とします。このとき、複素平面内の正の実軸 の補集合の上で と定義し、右上の図のように積分経路 C を取ります(順路は反時計回り)。このとき と積分を用いて表示することが出来ます。ところが、この右辺の積分表示は、実は で定義できることが…

Riemann の zeta 関数(その 2)

ベルヌーイ数と は で正則な関数なので、この範囲で Taylor 展開できます。それを としておきます。 かつ であることから、各 を求めることが出来ます。その一方で は偶関数なので、 が成り立ちます。以下 とおくと となることが分かります。この をベルヌー…

Riemann の zeta 関数(その 1)

今回は、圏論をちょっとお休みして、Riemann の zeta 関数のお話をしたいと思います。Riemann の zeta 関数とは で定義され、これは と表すとき、 で収束し、正則関数となります。 と素数の関係 p を素数とします。我々は のとき という級数展開が出来ること…

圏論への誘い(その 8)

ファイバー積と双対ファイバー積 対象 と、射 に対し、 のファイバー積(fiber product)とは、 で、以下の性質を満たすもののことを言います。 で を満たすものが存在するならば、 で を満たすものが一意に存在する このとき、上図の正方形の図式を引き戻し(p…

圏論への誘い(その 7)

核と余核 前回、差核と双対差核を定義しました。ところで、零対象が存在する圏においては、任意の二つの対象間に零射を定義することができました。これを用いて、射 に対して、 を核(kernel)、 を余核(cokernel)と言います。 ところで、圏 には零対象が存在…

圏論への誘い(その 6)

差核と双対差核 圏 の対象 と、射 を固定します。このとき が で なるものが存在すれば、 で を満たすものが一意的に存在する の二つの条件を満たすとき、 と の差核(difference kernel)または等化(equalizer)であると言います。 またこのとき、対象 のこと…

圏論への誘い(その 5)

直積と直和 圏 の二つの対象 を固定します。 このとき が直積であるとは、任意の対象 と射 に対して を満たす射 が一意的に存在するときを言います。 またこのような一意的な射のことを と表します。 このような性質を満たす対象を と書いたりしますが、圏の…