数学・その他

Fibonacci 数列の母関数

あまりに結果が綺麗だったので、「数学ガール」から引用します。Fibonacci 数列は、次の漸化式で定義されます。 一般に、数列 に対して、べき級数 を、数列 の母関数と言います。今、Fibonacci 数列の母関数を とおきましょう。すると から となり、 以降の…

圏論への誘い(その 14・最終回)

部分圏の極限 が の部分圏であるとき、包含関手 の極限・余極限をそれぞれ と表すことにします。 極限・余極限の例 最後に、いくつかの極限・余極限の例を挙げて、この話題を締めくくりたいと思います。 0 を空圏(対象も射も存在しない圏)とします。これは任…

圏論への誘い(その 13)

左随伴と右随伴は双対である 関手 が与えられたとき、それは反変関手 を与えますが、(すなわち )、(すなわち ) に対して とは のことですから です。同様に なので となり、結局(共変)関手 が与えられたことになります。 さて、 が の左随伴関手であるとき、…

圏論への誘い(その 12)

圏 今、集合からなる集合*1 V の全ての要素を対象とし、それら集合間の全ての写像を射とする圏を考えることが出来ます。これを で表します。V がユニバースであるとき、 です。一般には、V を固定して考えないので単に と書きます。これはある固定された圏で…

圏論への誘い(その 11)

関手の例 基本群 基点付き位相空間とその間の連続写像からなる圏 を考えます。この圏の対象は、位相空間 X と、その基点 からなる組 で、射 とは、f が連続写像でかつ であるもののことを言います。 このとき、 に対して、その基本群 を対応させることは、圏…

圏論への誘い(その 10)

いよいよ二つの圏を結びつけるもの・関手(functor)を定義します。 共変関手・反変関手 圏 に対して、 に対して を、また、 に対して を対応させるもので を満たすものを から への共変関手(covariant functor)と言います。また、二つ目の条件を に変えたもの…

圏論への誘い(その 9)

圏論に戻ります。 双対圏 圏 が与えられたとき、その双対圏(dual category)(もしくは逆圏(opposite category)) を、以下のように定義することができます。 まず、 の対象とは の対象です。そして、 のとき で定義します。つまり、 における a から b への射…

圏論への誘い(その 8)

ファイバー積と双対ファイバー積 対象 と、射 に対し、 のファイバー積(fiber product)とは、 で、以下の性質を満たすもののことを言います。 で を満たすものが存在するならば、 で を満たすものが一意に存在する このとき、上図の正方形の図式を引き戻し(p…

圏論への誘い(その 7)

核と余核 前回、差核と双対差核を定義しました。ところで、零対象が存在する圏においては、任意の二つの対象間に零射を定義することができました。これを用いて、射 に対して、 を核(kernel)、 を余核(cokernel)と言います。 ところで、圏 には零対象が存在…

圏論への誘い(その 6)

差核と双対差核 圏 の対象 と、射 を固定します。このとき が で なるものが存在すれば、 で を満たすものが一意的に存在する の二つの条件を満たすとき、 と の差核(difference kernel)または等化(equalizer)であると言います。 またこのとき、対象 のこと…

圏論への誘い(その 5)

直積と直和 圏 の二つの対象 を固定します。 このとき が直積であるとは、任意の対象 と射 に対して を満たす射 が一意的に存在するときを言います。 またこのような一意的な射のことを と表します。 このような性質を満たす対象を と書いたりしますが、圏の…

圏論への誘い(その 4)

今しばらくは、一つの圏 の中だけで話をすることにします。 単射、全射、同型射 が単射(mono)であるとは、任意の対象 と任意の射 に対して が成り立つことを言います。 が全射(epi)であるとは、任意の対象 と任意の射 に対して が成り立つことを言います。 …

圏論への誘い(その 3)

以下、「集合」「写像」は、前回までに準備した、拡張された意味で用いるものとします。 圏を構成するもの 圏(category)は、以下のようなものによって構成されます。 対象の集合 射の集合 二つの写像 恒等射を定める写像 射の合成を定める写像 、ただし 、ま…

圏論への誘い(その 2)

もう少し下準備にお付き合いください。 より拡張された意味での「写像」 を小さな集合とするとき、 の部分集合を から への対応と言いました。特に、対応 が *1] の略記です。)) を満たすとき、 から への写像と言い、 に対して となる のことを と書くので…

圏論への誘い(その 1)

いよいよ圏論の基礎についてです。今回は、その下準備的な話をしたいと思います。 小さな集合とクラス 私たちが普段数学で扱う「集合」とは、Zermelo-Fraenkel 公理系によってその性質が定められているものを言います。これを区別して「小さな集合」と呼ぶこ…