2008-12-01から1ヶ月間の記事一覧

Hom の左完全性の逆について(その 3)

前回の続きです。(定理 2 の証明続き) 十分性について (i) が全射であること とおき、自然な準同型 を考える。このとき である。 は単射だから、これより となり、、すなわち を得る。 (ii) であること 任意の に対して である。よって特に とおけば を得る…

Hom の左完全性の逆について(その 2)

さて、Hom の左完全性にはもう一つの形があります。 定理 2 左 R - 加群 M , M ' , M '' と準同型 が与えられたとき、 が完全となるための必要十分条件は、任意の左 R - 加群 N に対して が完全となることである。(証明) 必要性について (i) が単射であるこ…

Hom の左完全性の逆について(その 1)

加群の重要な定理の一つに Hom の左完全性と言われるものがありますが、私は今まで、その逆が成り立つことを知りませんでした。先日、DS 数学 BBS・2 へのとくなみきらさんからの質問によってこの事実を知り、また、その証明がAtiyah‐MacDonald 可換代数入門…

「層・圏・トポス」復刊 !

竹内外史先生の名著「層・圏・トポス 現代的集合像を求めて」(日本評論社)が、初版第 1 刷から 30 年の時を経て復刊しました !復刊したことを昨日 id:yugui さんに教えていただいて、本日オープンしたばかりのジュンク堂書店札幌店に行ったら…。最初は「あれ…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 4・最終回)

以上で準備が整ったので、本定理の証明に入る。 R を Noether 的付値環とする。このとき、任意のイデアル は、ある に一致する。したがって、R は PID である。R の極大イデアルを I = tR とする。 一般に、Krull の共通部分定理において R が Noether 整域…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 3)

付値環 R を整域とする。その商体 K の各元 に対して が成り立つとき、R を K の付値環という。付値環のイデアル I , J に対しては か かのいずれかが常に成り立つ。したがって、付値環には極大イデアルは一つしか存在しないので、局所環である。また、イデ…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 2)

Artin-Rees の補題(続き) に対する の係数比較。各 において とおいて の係数に着目すると となるが、ここで により であるから、この係数は に属する。以上で証明が終わった。 Krull の共通部分定理 R のイデアル I ,J があって、J は有限生成であるとする…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 1)

しばし連載を休止してお勉強。以下、 は特に断らない限り単位元をもつ可換環。 Artin-Rees の補題 を Noether 環、 をそのイデアルとする。 の部分環 はやはり Noether 環となる。これを示すには として が全準同型となることを言えばよい。実際 に対しては …

ε - δ 論法(その 9)

数列にもう少しだけお付き合いください。 Cauchy 列 定義 数列 について、任意の に対してある自然数 が存在して を満たすとき、 は Cauchy 列であるという。Cauchy 列は非常に強力な概念で、例えば 収束列は Cauchy 列である Cauchy 列のある部分列が に収…

ε - δ 論法(その 8)

さて、以前に紹介した について、この数列が 0 にも 1 にも収束しないことは、簡単に見て取ることができます。実際 を満たす が無限個()存在するので 0 には収束しませんし、同じく となる も無限個()存在するので 1 にも収束しません。しかしながら、これだ…