2005-01-01から1年間の記事一覧

群の表現と行列の Jordan 標準形(その 2)

表現の同値 さて、群の表現を数え上げると言っても、実質的に同じとみなせるものまでいちいち数え上げるのは御免こうむりたいものです。そこで、G の二つの表現 が同値であるということを s.t. で定義します。これが本当に同値関係になっていることは、簡単…

群の表現と行列の Jordan 標準形(その 1)

今日から数回に分けて、群の表現と行列の Jordan 標準形の関係についてお話したいと思います。 あまり一般化するとややこしくなる(というより、私自身が詳しくない)ので、G は有限群、K は標数が 0 の代数閉体とします。 K 上のベクトル空間 V があって、G …

ヘルダーの不等式

、また を の領域*1とします。今、 上の複素数値関数*2 で、 が有限となるようなものの全体を と表すことにします。 が 上のほとんどいたるところで一致*3するとき、同じことですが がほとんどいたるところ 0 となるとき と定義します。これは同値関係になる…

百分率の推定

例えば、こんな報道があったとしましょう。*1 「アメリカの対イラク政策支持率は 68.4% です。」 「随分高い支持率だな」などと呑気な事を言っているあなた、この数字が から作られたものだったとしたらどうですか。途端に「何だ、19 人中の 13 人か」と思う…

LaTeX2e 標準コマンド ポケットリファレンス

LaTeX2E 標準コマンド ポケットリファレンス (Pocket reference)作者: 本田知亮出版社/メーカー: 技術評論社発売日: 2005/06/25メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る 何かと を使うことの多い私にとってはバイブルとも…

コホモロジー占い

id:uramoomin さんのコホモロジー占いをやってみました。 あなたは特異コホモロジーです。 少々意味不明なところもあるが、有無を言わせぬ花がある。関手性の見やすいあなたは特異コホモロジーではないですか ? 一見して計算はしにくいですが、長く付き合え…

Cramer の公式

今、 という条件の下で、連立方程式 をせっせと解いてみると を得ます。ところで、これをちょっと書き直すと となります。何か法則性を感じませんか。

S3 から S2 への連続写像

しばらく代数の話題が続いたので、ここで幾何の話題をお送りします。 今、三次元球面 を とおいて の部分多様体とみなすことにします。 一方で に s.t. によって同値関係を入れ、これによって作られる商集合 を と表し、複素射影直線*1と言います。また、 を…

多元環の正則表現

R を可換環として、 を考えます。もし が環としての構造を持つように和と積を定めることが出来たならば、それは R 係数の n 次正方行列のなす環 の部分環として表現できる、という、驚くべき事実があります。 の場合の例をいくつか見てみましょう。 このうち…

四元数の行列表現

先日話題にした Hamilton の四元数体は、複素 2 × 2 行列環の部分環として表現できます。 とおくと、これは和に関して可換で が零元です。また、積について結合法則が成り立ち、 が単位元です。さらに分配法則も成り立つので、 は環になります。 ここで、零…

正 n 角形の定義

数学的に見て、正 n 角形のもっとも自然な定義はこうでしょう。 n 個の辺の長さが全て等しく、n 個の内角の大きさが全て等しい n 角形を正 n 角形という。 ところで、n = 3 のとき、つまり正三角形の場合は 三つの辺の長さが全て等しい三角形を正三角形とい…

分数の足し算

現在、小学校では、分数の足し算は分母が同じもの同士の足し算・引き算しか教えません。5 年生で分母が同じもの同士の足し算・引き算を教わることになっています。つまり のようなものは教えますが、 のようなものは(5 年生には)教えないのです。 私は初め、…

四元数と八元数

id:elb_phys さんの日記より。 四元数(クオータニオン)は非可換なので環。 八元数は非可換、結合法則を満たさないので環でもない ハイ、そのとおりです。しかし、はてなのキーワード解説にもあるとおり、任意の 0 でない四元数は積に関する逆元を持ちます。…

ハイクブログ

id:kururu_goedel 様に倣って、私も livedoor ハイクブログを始めてみました。数学のお題を中心に、時々詠んでみようと思います。

私信

遅くなりましたが、mathesis 様からコメントを頂いたので、この場でお返事。 数学の好きな子はどんどん先に進めばいいし、数学が嫌いなら、別に無理強いする必要もない。 「好きな子はどんどん先に進めばいい」という考え方には大いに賛成です。嫌いな子に、…

半群

集合 S の上に「積」と呼ばれる演算 φ : S × S → S が定義されているものとします。 と書くことにして、S 上の演算が結合法則 を満たすとき、S は半群であると言います。ところで、ちょうど 2 個の元からなる(つまり、位数 2 の)半群は、実は 4 種類あります…

数学掲示板の話。

「よく質問される問題」に 2 問追加。余りに頻度が高いので、解答を作ってしまいました。本音を言えば「いちいち回答すんの面倒くさいんじゃ、これでも読んどけやゴルァ !!」なんですが(^^;) 最近、私が作った有限群の分類に関する PDF ファイルが引用される…

ポアンカレ予想を困難にさせていたもの(続き)

先日の記事に頂いたコメントに、この場を借りてお返事。 id:kai-kimiyoshi 様 Whitehead の定理とは、この文脈では X , Y を高々 n 次元の多面体とし、f : X → Y を連続写像とする。f が導くホモトピー群の準同型写像 が に対して同型であるならば、f はホモ…

ポアンカレ予想を困難にさせていたもの

ポアンカレ予想(Poincaré conjecture)とは、位相幾何学の用語を用いると「単連結な 3 次元多様体は 3 次元球面に同相である」というものです。基本的な用語の定義を知っていれば、この予想の言おうとしていることはわかるはずです。 ところが、その証明には…

大数の法則

表が出ることと裏が出ることが同様に確からしいコインを投げるとき、表が出る確率、裏が出る確率はともに 1/2 です。従って、コインを 2 回投げたとき、表が 2 回出る確率は 1/4。そう簡単に表と裏が 1 回ずつ出てくれるとは限りません。 しかし、1000 回中 …

数学的帰納法は帰納的 ? 演繹的 ?

今日、数学掲示板にて「数学的帰納法は帰納的か演繹的か」という質問を頂きましたが、私はこの手の話に詳しくないので、良くわかりません。どなたか偉い人が降臨するのを待つよりありません。 的外れかもしれませんが、 … (*) を数学的帰納法で証明するなら…

「解析的定義」とは ?

以前も話題にしましたが、高校数学では を幾何的な直感に基づいて証明しています。これに対して、そのような直感を排し、数の性質のみに基づいて論ずることが出来る言葉だけを用いて概念を定義する手法を「解析的定義」という言い方をします。例えば「解析入…

数学を難しくさせているもの

数学を難しい学問だと思い込ませている一つの要素は、やはり独特の「記号」ではないでしょうか。積分記号とか、見るだけでも蕁麻疹が出る、という人もいるのではないでしょうか。 私に言わせれば、記号なんてただの飾りです*1。微分も積分も、その概念は非常…

方眼紙に 3 cm² の正方形は描けない

1 cm マスの方眼紙に、(目盛のない)定規とペンだけ(コンパスは使ってはいけません)で面積が 3 cm² の正方形は描けるでしょうか ? 答は「No.」です。 方眼紙に引かれた線の交点を格子点と見るとき、座標が有理数であるような点は作図することが出来ます。従っ…

臭いの速度は無限大

偏微分方程式の一つである熱方程式 on ですが、実は臭いの拡散についても同じ方程式が成り立つことが知られています。そして、熱方程式の特徴は、初期値として を満たすような φ を取ると on が成り立つところにあります。これは、同じく偏微分方程式として…

身近なところにある剰余類

整数をある数で割った余りによって、整数全体を分類する「剰余類」の考え方は、実は極々身近なところで使われています。 お手元のカレンダーを見てください。日付を 7 で割った余りが同じ日は、同じ曜日ですよね。これは日付という整数を 7 で割った余りで日…

剛体の重心

ある領域 D ⊂ 上の密度分布 μ が与えられたとき、D の重心の座標は で与えられます。特に密度が一様の場合は で与えられます。さて、先日雑談掲示板に質問のあった 密度が一様で半径 r、中心角 2α の円弧の重心は円の中心から の距離であることを示せ。 につ…

サイバーグ・ウィッテン理論

かつての 4 次元トポロジーは、ドナルドソンの仕事によるところが大きく、それによって多くの結果が得られてきました。しかし最近になって、「サイバーグ・ウィッテン方程式」と言われる方程式を調べることによって、4 次元トポロジーは飛躍的な発展を遂げ、…

指数関数は急速に増加する

良く「指数的に増加する」という言い回しをしますが、これは急速な増加の状態を指しています。では指数関数は一体どのくらいのスピードで増加するのでしょう ? で試してみましょう。 例えば、 がどのくらいの大きさの数なのか、大雑把に計算してみます。真剣…

キーワード編集

やっとのことで「ホモトピー」「ホモトピー群」の二つのキーワードを編集。これをやっておかないと、変な単語に引っかかるもので…。