方眼紙に 3 cm² の正方形は描けない

1 cm マスの方眼紙に、(目盛のない)定規とペンだけ(コンパスは使ってはいけません)で面積が 3 cm² の正方形は描けるでしょうか ? 答は「No.」です。
方眼紙に引かれた線の交点を格子点と見るとき、座標が有理数であるような点は作図することが出来ます。従って、三平方の定理を考えて
x^2+y^2=3 … (1)
という不定方程式が有理数の解を持てば、長さが \sqrt{3} cm の線分が作図でき、そのような正方形が描けることがわかります。ところが、です。
もし、上の方程式が有理数解を持つとしましょう。すると、最大公約数が 1 であるような三つの整数 X , Y , Z を用いて
x=\frac{X}{Z},y=\frac{Y}{Z}
と表すことが出来ます。これを (1) に代入することで整数 X , Y , Z が満たすべき方程式
X^2+Y^2=3Z^2 … (2)
が得られます。この方程式を mod 3 で考えると
X^2+Y^2\equiv 0\pmod{3}
となります。これが成り立つためには
X\equiv 0\pmod{3},Y\equiv 0\pmod{3},
すなわち X も Y も 3 の倍数でなければなりません。もし X , Y がともに 3 の倍数だとすると、(2) の左辺は 9 の倍数となります。従って Z^2 は 3 の倍数となり、Z 自身が 3 の倍数でなければならないことになります。これは X , Y , Z の最大公約数が 1 であるという仮定に反します。従って方程式 (1) は有理数解を持ちません。つまり、(目盛のない)定規とペンだけでは、面積が 3 cm² の正方形は描けないのです。