2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

Affine 平面(その 5・最終回)

最後に、予告通り Affine 平面上の直線の数について特定しておきます。 命題 3 n 次の Affine 平面において、一点を通る直線は (n + 1) 本存在する (証明) Affine 平面上の任意の点 p を取り、p と異なる点 を取る。このとき、公理 3 により、直線 上にない…

Affine 平面(その 4)

Affine 平面の次数の定義 いよいよ Affine 平面の次数の定義のために重要となる定理を示します。 定理 1 Affine 平面上のいかなる直線も、その上にある点の数は同じである。 (証明) Affine 平面上の任意の異なる 2 直線 l , m を与える。 i) l と m が平行で…

Affine 平面(その 3)

もう一つ、Affine 平面の大事な性質を見ておきます。 命題 1.4 Affine 平面上のいかなる点に対しても、その点を通る直線は少なくとも 2 本ある。 (証明) 命題 1.3 により保障された 4 点を p , q , r , s とし、Affine 平面上の任意の点を a とする。一般性…

Affine 平面(その 2)

直線に関する簡単な命題をいくつか見ておきましょう。 命題 1.1 2 本の直線は、交わらないかただ 1 点で交わるかのいずれかである。 (証明) 2 点以上で交わるとすると、その 2 点を通る直線は公理 1 によりただ 1 本のみであるから、2 本の直線は同一となっ…

Affine 平面(その 1)

前回、有限体上の射影平面の点の数と直線の数に関する記事を書きましたが、これは単なるメモなどではなく、今回から始める Affine 平面の話に直結させるために書いたものです。 Affine 平面 まずは公理を三つ用意します。 公理 1 二点 p , q に対して、p と …

有限射影平面の点の数

有限体 上の射影平面 の点の数は である。また、直線の数も、 の直線の数 に無限遠直線 1 本を加えたものなので である。

複素数の平方根

Java で複素数を扱いたくて、その平方根を計算させるためにどうするのが一番良いか、と考えていたときに思いついたことをメモしておきます。 を与えられた複素数として が成り立つように実数 x , y を定めるには、連立方程式 を解けばよい。しかるに である…

面積保存型写像の軌道

面積保存型写像による力学系 において、初期値をいろいろと取り換えた時に現れる様々な閉軌道です。自己交差するもの、いくつかの閉軌道に分かれるものなど様々です。また、自己交差するものについては、その自己交差している点の付近は厳密にはぼやけている…

複素 Newton 法が生み出すフラクタル

の解を複素 Newton 法で求めるとき、初期値によってどの解に収束するかを色分けで示したのが上の図。1 に収束するのがマゼンタ、 に収束するのがシアン、 に収束するのが緑。Java で作りましたが、綺麗に出来ました。

ε - δ 論法(その 15・最終回)

合成関数の連続性 一般に , のとき、 となるとは限りません。実際、f(x) として恒等的に 0 であるものを取り とすると、明らかに任意の に対して であり、また ですが、 は恒等的に 1 なので となってしまいます。これは g が y = 0 = f(a) で連続でないがゆ…

ε - δ 論法(その 14)

相変わらず変数、関数値ともに実数の場合で考えます。 極限の四則演算 定理 1 とし、b , c は有限の値とする。このとき (証明) いずれも以下の不等式および等式から明らか。 b , c は有限の値としましたが、これは例えば のときの などは となって、いわゆる…

四分円の重心(続き)

四分円の重心を、直接に微積分を使わずに極限操作のみによって求めることもできる。上図のように、四分円を n 等分して細長い扇形を作る(図では 20 等分した)。その扇形を x 軸に近い方から順に とする。n が十分大きいとき、各 はほぼ三角形とみなせる。そ…

ε - δ 論法(その 13)

不連続点の種類 さて、今度は連続でない例を挙げることにします。 とおくと、良く知られているように ですから、これは x = 0 で連続ではない例になっています。ところが、x = 0 のときの値を取り換えて としてしまえば、今度は x = 0 でも連続になります。…

ε - δ 論法(その 12)

右極限・左極限 関数 f(x) において、変数 x が実数値のときには、x が有限の値 a に近づく方法は二通りある、と前回書きました。そこで次の定義をおきます。 定義 3 であるとは、任意の に対して が存在して となることである。これを右極限と言い、 で表す…

四分円の重心

上図の半径が a の四分円の重心(赤い点の部分)を、幾何的、もしくは代数的に求められるか、という問題に対して、私なりの「No」という考えを記しておきます。答から言うと、この四分円を y 軸を中心に回転させれば、Pappus-Guldinus theorem により、重心の …

ε - δ 論法(その 11)

久々に 論法の続きです。 関数の極限 数列 の場合、 の挙動だけが問題で、そのほかには興味がありません。しかし関数 f(x) の場合になると、x が有限の値 a に近づくときの挙動も問題になります。そこでいきなり定義から入ります。変数や値が複素数の場合に…

一般逆行列(その 7・最終回)

さて、 における Moore-Penrose 形一般逆行列については、A の特異値分解 (ただし を用いれば、明らかに が Moore-Penrose 形の一般逆行列になる。このことから Moore-Penrose 形一般逆行列がほとんど一意に定まることがわかる。 Moore-Penrose 形一般逆行列…

一般逆行列(その 6)

特異値分解(特異値標準形) 結論から言うと、 行列 A に対して n 次の unitary 行列 と m 次の unitary 行列 があって , ただし (r = rank A) で と書ける、という主張で、このときの を A の特異値分解という。 今、 は n 次の Hermite 行列であるが、 が定…

一般逆行列(その 5)

最小誤差形一般逆行列 線型写像 において、今度は に で計量を与えて計量空間とする。 のとき、 に対して( でも良い !)、 が最小なものを考える。 前回同様、 行列 A の QR 分解 (P は置換行列)を作る。ただし で、 (i = 1 , … , r , j = 1 , … r) は上三角…

一般逆行列(その 4)

ようやく一般逆行列の話に戻ります。 最小ノルム形一般逆行列 線型写像 において には で計量を与えて計量空間とする。 のとき、 に対して を満たすもののうち が最小なものを考える。 行列 の QR 分解 (P は置換行列)を作れば と表せる。ただし () は下三角…

Hom の左完全性の逆について(その 4)

ちょっと coffee break. 鎖複体 において、任意の左 R - 加群 N に対して双対鎖複体 が考えられる。Hom の左完全性の逆とはすなわち ということである。一般に任意の R - 加群 N に対して だから、 から はすぐわかる。したがって後示すことは である。 今 R…

一般逆行列(その 3)

QR 分解(一般形) A を 行列、 とします。このとき、m 次の正則行列 S と n 次の置換行列 P があって と書けます。ただし、B は対角成分が 0 でないような r 次の上三角行列。 ここで、 を QR 分解(後述)して と表せたとします。ただし Q は m 次の unitary …

一般逆行列(その 2)

Hausholder 行列 は か を表すものとする。 が を満たすとき ( は単位行列) とおく。このとき明らかに 、すなわち は Hermite 行列である。また だから、 は unitary 行列でもある。この のことを Hausuholder 行列という。 が成り立つ。今、 を満たす に対…

変分学入門

変分学入門 (基礎数学シリーズ)作者: 福原満洲雄,山中健出版社/メーカー: 朝倉書店発売日: 2005/03メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る例えば最速降下線や等周問題などはまさにこの分野。この本の最初には面白い例が載っている…