四分円の重心(続き)

四分円の重心を、直接に微積分を使わずに極限操作のみによって求めることもできる。

上図のように、四分円を n 等分して細長い扇形を作る(図では 20 等分した)。その扇形を x 軸に近い方から順に T_1,T_2,\dots,T_n とする。

n が十分大きいとき、各 T_k はほぼ三角形とみなせる。そこで、それらの重心を求め、その重心を単位質点とする質点系の重心を求めて n\to\infty とすれば良い。

計算を簡略化するために複素数を用いると、各 T_k の重心は
z_k=\frac{a}{3}(e^{\frac{(k - 1)\pi}{2n}i}+e^{\frac{k\pi}{2n}i})= \frac{ae^{\frac{(k - 1)\pi}{2n}i}}{3}(1+e^{\frac{\pi}{2n}i})
である。これらの質点系の重心 G_n
\begin{align}G_n&=\frac{1}{n}\sum_{k=1}^n z_k\\&=\frac{a}{3n}(1+e^{\frac{\pi}{2n}i})\sum_{k=1}^n e^{\frac{(k - 1)\pi}{2n}i}\\&=\frac{a}{3n}(1+e^{\frac{\pi}{2n}i})\frac{1-e^{\frac{\pi}{2}i}}{1-e^{\frac{\pi}{2n}i}}\\&=\frac{a}{3n}(1-i)\frac{1+e^{\frac{\pi}{2n}i}}{1-e^{\frac{\pi}{2n}i}}\\&=\frac{a}{3n}(1+i)\frac{1+\cos\frac{\pi}{2n}}{\sin\frac{\pi}{2n}}\end{align}
である。後は n\to\infty の極限を求めるために変形して
G_n=\frac{2a}{3\pi}(1+i)\frac{\frac{\pi}{2n}}{\sin\frac{\pi}{2n}}(1+\cos\frac{\pi}{2n})\to\frac{4a}{3\pi}(1+i)(n\to\infty)
となる。途中に Riemann 和が入るので、積分に持ち込めば容易なのだが、この場合は等比級数の計算なので、それをしなくても求まる、ということ。

なお z_k の代わりに、重心が原点から \frac{2a}{3} の距離にあると考えて
w_k=\frac{2a}{3}e^{\frac{(2k-1)\pi}{4n}i}
を使って計算すると、もう少し簡単(?)に同じ結論が得られる。