ε - δ 論法(その 14)

相変わらず変数、関数値ともに実数の場合で考えます。

極限の四則演算

定理 1

\lim_{x\to a}f(x)=b,\lim_{x\to a}g(x)=c とし、b , c は有限の値とする。このとき

  1. \lim_{x\to a}(f(x)\pm g(x))=b\pm c
  2. \lim_{x\to a}kf(x)=kb(\forall k\in\mathbb{R})

(証明)
いずれも以下の不等式および等式から明らか。

  1. |(f(x)\pm g(x))-(b\pm c)|=|(f(x)-b)\pm(g(x)-c)|\leq|f(x)-b|+|g(x)-c|
  2. |kf(x)-kb|=|k||f(x)-b|

\qed

b , c は有限の値としましたが、これは例えば b=c=\infty のときの \lim_{x\to a}(f(x)-g(x)) などは \infty-\infty となって、いわゆる「不定形」の形になってしまって具合が良くないので、このような条件を付けたまでです。

定理 2

定理 1 と同じ条件下で

  1. \lim_{x\to a}f(x)g(x)=bc
  2. c\neq 0 ならば \lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{b}{c}

この定理の証明にはいくつかの補題が必要になります。

補題 1

\lim_{x\to a}f(x)=b かつ b が有限の値ならば、ある \delta>0 があって f(x) は |x-a|<\delta有界である。
(証明)
|x-a|<\delta\Rightarrow|f(x)-b|<1
となるように \delta>0 を取れば、|x-a|<\delta のとき |f(x)|<1+|b|.\qed

補題 2

\lim_{x\to a}g(x)=c かつ c\neq 0 ならば、ある \delta>0 があって |x-a|<\delta のとき |g(x)|>\frac{|c|}{2}.
(証明)
c\neq 0 だから、ある \delta>0 があって |g(x)-c|<\frac{|c|}{2} である。このとき
\left| |g(x)|-|c|\right|\leq|g(x)-c|<\frac{|c|}{2}
だから
\frac{|c|}{2}<|g(x)|(<\frac32 |c|)
を得る。\qed

(定理 2 の証明)
前半は補題 1 を使うと
|f(x)g(x)-bc|=|f(x)(g(x)-c)+c(f(x)-b)|\leq|f(x)||g(x)-c|+|c||f(x)-b|
で f(x) が x = a のある近傍で有界なので、M>0 があって
|f(x)g(x)-bc|=\leq M|g(x)-c|+|c||f(x)-b|
となることからわかる。
後半は補題 2 から
\left|\frac{1}{g(x)}-\frac{1}{c}\right|=\frac{|g(x)-c|}{|c||g(x)|}<\frac{2}{|c|^2}|g(x)-c|
となることからわかる。\qed

以上のことから

定理 3

f(x) , g(x) が x = a で連続のとき、f(x)\pm g(x)、および任意の実数 k に対して kf(x)、さらに f(x)g(x) はまた x = a で連続である。さらに g(a)\neq 0 ならば \frac{f(x)}{g(x)} も x = a で連続である。

が直ちに従います。合成についてはまた後ほど。