2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

数学におけるランダムの定義

数学において、ランダムとはそもそも何でしょうか。それは「起こりうる全ての事象が全て等しい確率で起こるような確率空間を与える」ことに他ならず、言わば神から与えられたような代物です。実際に行われたある試行がランダムかどうか、厳密に調べる術は、…

私信

初めて多様体を勉強すると、ほとんどの人はドーナツの表面のようなものを思い浮かべるでしょう。 でも、実際には Grassmann 多様体のように、そのような捉え方をしないほうが都合の良い多様体もたくさんあります。 この文章だけでは、「そのような捉え方」が…

囚人のジレンマ

今回はゲーム理論において有名な例の一つ「囚人のジレンマ」を紹介します。 以下のルールの下で行われるゲームを考えます。*1 プレイヤーの数は 2 二人のプレイヤーの利得の和は一定とは限らない 各プレイヤーは二人の合意に基づく協定によってではなく、独…

直感と相容れない確率

40 人の人が、10 枚のコインを一度に投げるとします。このとき、10 枚が全て表になる確率、及び、10 枚が全て裏になる確率は、それぞれ 1/1024 です。したがって、40 人のうち、少なくとも一人が 10 枚とも全て表、もしくは裏になる確率は で、約 7.5%。決し…

数学用語の難しさ

数学用語は何かと難しいものです。 例えば、単に「体」と言うと、乗法の可換性を仮定することがほとんどで、乗法が可換でないものは「斜体」と呼んで区別するのが最近の傾向です(稀に「可換体」「非可換体」と区別する人もいますが)。 ところが、単に「環」…

岩波講座 基礎数学

岩波講座 基礎数学(小平邦彦 ! 編) 全巻が 21000 円 !! 確かに安いですねー。私は学生時代に全部揃えました(ぉ*1 *1:一部「基礎数学選書」で代用してますが。

Torricelli's trumpet の表面積

Torricelli's trumpet は体積は有限確定であることは先程見ました。では表面積は、特に、 のグラフの の部分を x 軸を中心に回転させてできる曲面の面積はどうでしょう。曲面積を S とすると となり、曲面積も無限大となります。無限に伸びる立体で、表面積…

面積が無限大で、回転体の体積が有限になる例

は有限の値に収束しないことで有名です。これは、閉領域 の面積が無限大であることを意味します。 ところが、この領域を x 軸を中心に回転した回転体の体積 V を求めると となり、何と有限(!!)になってしまいます。これはトリチェルリ*1が 1644 年に見つけた…

級数と Lebesgue 積分(補足)

以前の議論の中で、いくらかぼかしていた部分があったので、ここではっきりさせておきます。可測関数 f に対し、f が可積分であることと、|f| が可積分であることが同値である、と書きました。f が実数値のときは確かに定義からすぐわかるので良いのですが、…

ボロミアン・リング

右上の画像は「ボロミアン・リング」と言われるものです。この三つある輪のうち、どれか一つを無いものと思えば、残る二つの輪は絡み合っていません。ところが、三つ合わさった途端に、この輪は外れなくなってしまいます。結び目理論で、どの二つの自明な結…

実 Jordan 標準形(後編)

さて、 の基底をうまくとってやりたい*1のですが、まずは のときを考えましょう。 において、 とおくと となるので、基底 に関する t の行列表示は となります。これを参考に、 の場合を考えてみましょう。 ちょっと手抜き(?)して、 とおき、 への の作用を…

実 Jordan 標準形(前編)

先日は、群の表現論との関係で、行列のジョルダン標準形の話をしました。今回は、係数体の範囲を実数に限定するとどうなるか、というお話をします。 全く同じ要領で、 (ただし 、、) と直和分解することがわかります。しかし、今度は がこれ以上直和分解しな…

楽しくなけりゃ数学じゃない

mathesis さんのコメントを引用。 好きな人が好きなことをやってそれで結果として発展すればそれでいい それでいいんだと思います。数学は断じて「数が苦」であってはならないと思います。楽しくなければ、つまり「数楽」でなければ、現在までの数学の発展は…

はてなリングのロゴに込めた思い

id:uramoomin:20060105 の記事を読んで、思わず「お見事 !」と思いました。 積分とは、言ってみれば「連続量の和」を取っているようなものです。私は、数学を愛し、また数学に携わる人たちが、離散量としてではなく連続量として、そしてそれらが合わさること…

級数と Lebesgue 積分(その 3・最終回)

さて、級数 を積分とみなすことにより、ルベーグ積分論における様々な結果が応用できます。例えば関数項級数の和として表される関数の連続性や微分可能性(項別微分定理)は優収束定理の特別な場合として、また、二重級数の和の順序の交換や関数項級数の項別積…

コンパクト化された数直線

数直線 に対して、次のようにして新しい「数直線」を作ることが出来ます。 の基本近傍系を (ただし )と定める の基本近傍系を (ただし )と定める このようにすると、 に と を付け加えた新しい位相空間が出来ます。これを と表します。 この新しい「数直線」…

級数と Lebesgue 積分(その 2)

前回までで、積分を定義するのに必要な概念は一通り揃いました。いよいよ、一般化された積分を定義します。 積分の定義 を測度空間、f を S 上の非負可測関数とします。 の互いに共通部分を持たない有限部分族 に対して、 と定義し、さらに和 を定義します。…

級数と Lebesgue 積分(その 1)

積分、と聞くと、何かユークリッド空間内の領域上での積分を想像する人が多いのではないでしょうか。もちろん、ユークリッド空間内の領域上での積分に対するイメージが根源にあるのは確かなのですが、それを一般化することによって、様々な応用がなされるよ…

群の表現と行列の Jordan 標準形(その 6・最終回)

前回までで、 上の線型写像を与えることは、[t]-加群としての を与えることに等しく、それは元をたどれば半群 の表現論であることを見ました。 ここで、有限群の表現のようにマシュケの定理が使えれば便利なのですが、残念ながら は有限でもなければ群でもな…

群の表現と行列の Jordan 標準形(その 5)

ここまでのまとめ ここまで、随分と小難しい話をしてきましたが、まとめると、有限群 G に対して、標数 0 の体 K 上有限次元の G 加群 V(すなわち、G の有限次数の表現)が与えられたとき、それは既約 G 加群の直和 として書ける、ということでした。行列で表…

群の表現と行列の Jordan 標準形(その 4)

部分表現と剰余表現 群の表現 が与えられたとき、V は G 加群(すなわち -加群)ですが、W が V の部分 G 加群であるとは が成り立つことを言います。このとき、 として新たな G の表現 を得ることが出来ます。これを表現 の部分表現 と言います。 表現 の部分…

群の表現と行列の Jordan 標準形(その 3)

多元環の正則表現 K を可換環とします。 が多元環の構造を持つとき、 は から、 上の自己線型準同型 への環準同型になります。また、 ならば ゆえ 、すなわち は単射です。 一方、 は の K-自由加群としての基底を固定することで とみなせるので、この対応と…