群の表現と行列の Jordan 標準形(その 3)

多元環の正則表現

K を可換環とします。K^n多元環の構造を持つとき、
\rho:K^n\ni a\to \rho(a)\in{\rm End}_K(K^n),\rho(a)(x)=ax
K^n から、K^n 上の自己線型準同型 {\rm End}_K(K^n) への環準同型になります。また、a\neq 0 ならば \rho(a)(1)=a\neq 0 ゆえ \rho(a)\neq 0、すなわち \rho単射です。
一方、{\mathrm{End}_K(K^n)}K^n の K-自由加群としての基底を固定することで {\mathrm{End}_K(K^n) \cong M_n(K)} とみなせるので、この対応と \rho との合成によって K^n から M_n(K) への単射が得られます。こうして、多元環 K^nM_n(K) の部分環として表現できます。これを多元環 K^n正則表現といいます。

群の表現は群環の表現である

G が有限群のとき、G の位数を n とすれば
K[G]\stackrel{\rho}{\to}{\rm End}_K(K[G])\stackrel{\sim}{\to}M_n(K)
なる対応によって、K[G] を M_n(K) の部分環として表現できます。これもやはり K[G] の正則表現といいます。G が有限でない場合でも、
\rho:K[G]\to{\rm End}_K(K[G])
のことを K[G] の正則表現といいます。
話を表現論に戻しましょう。群 G の表現 \pi:G\to GL(V) が与えられているとします。このとき、ごく自然なやり方で(つまり、\pi を線型に拡張することで) K[G] から {\rm End}_K(V) への準同型
\rho:K[G]\to{\rm End}_K(V)
を定めることが出来ます。逆に、
\rho:K[G]\to{\rm End}_K(V)
が与えられれば、\rho を G に制限して表現
\pi=\rho|_G:G\to GL(V)
が得られます。*1
かくして、群の表現と群環の「表現」が一対一に対応することがわかります。すなわち、G 加群とはすなわち K[G]-加群であり、群 G の表現論とは群環 K[G] の「表現論」であり、K[G]-加群の同型類を分類する作業なのです。(続く)

*1:G は群と仮定していますので、その \rho による像は GL(V) に含まれることに注意。