2008-01-01から1年間の記事一覧

Hom の左完全性の逆について(その 3)

前回の続きです。(定理 2 の証明続き) 十分性について (i) が全射であること とおき、自然な準同型 を考える。このとき である。 は単射だから、これより となり、、すなわち を得る。 (ii) であること 任意の に対して である。よって特に とおけば を得る…

Hom の左完全性の逆について(その 2)

さて、Hom の左完全性にはもう一つの形があります。 定理 2 左 R - 加群 M , M ' , M '' と準同型 が与えられたとき、 が完全となるための必要十分条件は、任意の左 R - 加群 N に対して が完全となることである。(証明) 必要性について (i) が単射であるこ…

Hom の左完全性の逆について(その 1)

加群の重要な定理の一つに Hom の左完全性と言われるものがありますが、私は今まで、その逆が成り立つことを知りませんでした。先日、DS 数学 BBS・2 へのとくなみきらさんからの質問によってこの事実を知り、また、その証明がAtiyah‐MacDonald 可換代数入門…

「層・圏・トポス」復刊 !

竹内外史先生の名著「層・圏・トポス 現代的集合像を求めて」(日本評論社)が、初版第 1 刷から 30 年の時を経て復刊しました !復刊したことを昨日 id:yugui さんに教えていただいて、本日オープンしたばかりのジュンク堂書店札幌店に行ったら…。最初は「あれ…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 4・最終回)

以上で準備が整ったので、本定理の証明に入る。 R を Noether 的付値環とする。このとき、任意のイデアル は、ある に一致する。したがって、R は PID である。R の極大イデアルを I = tR とする。 一般に、Krull の共通部分定理において R が Noether 整域…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 3)

付値環 R を整域とする。その商体 K の各元 に対して が成り立つとき、R を K の付値環という。付値環のイデアル I , J に対しては か かのいずれかが常に成り立つ。したがって、付値環には極大イデアルは一つしか存在しないので、局所環である。また、イデ…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 2)

Artin-Rees の補題(続き) に対する の係数比較。各 において とおいて の係数に着目すると となるが、ここで により であるから、この係数は に属する。以上で証明が終わった。 Krull の共通部分定理 R のイデアル I ,J があって、J は有限生成であるとする…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 1)

しばし連載を休止してお勉強。以下、 は特に断らない限り単位元をもつ可換環。 Artin-Rees の補題 を Noether 環、 をそのイデアルとする。 の部分環 はやはり Noether 環となる。これを示すには として が全準同型となることを言えばよい。実際 に対しては …

ε - δ 論法(その 9)

数列にもう少しだけお付き合いください。 Cauchy 列 定義 数列 について、任意の に対してある自然数 が存在して を満たすとき、 は Cauchy 列であるという。Cauchy 列は非常に強力な概念で、例えば 収束列は Cauchy 列である Cauchy 列のある部分列が に収…

ε - δ 論法(その 8)

さて、以前に紹介した について、この数列が 0 にも 1 にも収束しないことは、簡単に見て取ることができます。実際 を満たす が無限個()存在するので 0 には収束しませんし、同じく となる も無限個()存在するので 1 にも収束しません。しかしながら、これだ…

ε - δ 論法(その 7)

収束しないことの定義 数列が(ある値に)収束することの定義の否定を考えてみましょう。まず、 の定義を、論理式で書いてみます。この論理式を否定すれば、「収束しない」の定義が出来上がります。この最後の論理式を読み下すと「ある が存在して、無限個の …

ε - δ 論法(その 6)

そろそろ本題(?)の続きを書かないと忘れられそう(滝汗)なので、再開したいと思います。 発散の定義 これまでは、数列がある値に収束する、ということの定義を述べてきましたが、同様にして発散の定義を作ることができます。 定義 数列 が に発散する( と表記…

幾何学再発見

幾何学再発見 (数学ひろば)作者: 瀬山士郎出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2005/10メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 4回この商品を含むブログ (1件) を見る本の薄さの割には高いような気がするけど、欲しい。

コンピュータの数学

コンピュータの数学作者: ロナルド・L.グレアム,オーレンパタシュニク,ドナルド・E.クヌース,Ronald L. Graham,Oren Patashnik,Donald E. Knuth,有沢誠,萩野達也,安村通晃,石畑清出版社/メーカー: 共立出版発売日: 1993/08メディア: 単行本購入: 5人 クリッ…

Tajicoid

Cinderella を用いて分枝ごとに作図したものをペイントで重ね合わせました。

予想解決か ?

GeoGebraはどう? 様、GeoGebra を紹介していただき、また、貴重なコメントをありがとうございます。 平行であることは、円周角の性質から出ますね。 実は鈍臭くてこの部分が一番良く分かってません(滝汗)。 この問題は、直径とする円を描くのではなく、六芒…

新定理発見 ?

Cinderella で何気なく作図をしていて、面白い事実を発見しました。証明ができていないので、まだ予想の段階ですが、ここに記しておきます。 予想 定円 O に内接する六角形に対して、その各辺を直径とする円を描く。このとき隣り合う円の交点で O 上にないも…

ε - δ 論法(その 5)

数列の 論法は、以下のような抽象的な議論をするときには強力な道具になります。 例 ならば (証明) を固定する。 により ならば となる自然数 が存在する。 のうち最大のものを とすれば により ならば となる自然数 が存在する。 そこで とおくと のとき と…

シンデレラ―幾何学のためのグラフィックス

シンデレラ―幾何学のためのグラフィックス作者: J.リヒター‐ゲバート,U.H.コルテンカンプ,J¨urgen Richter‐Gebert,Ulrich H. Kortenkamp,阿原一志出版社/メーカー: シュプリンガーフェアラーク東京発売日: 2003/12メディア: 単行本 クリック: 27回この商品を…

「数学の輪」参加者の皆様

id:gould2007 さんが、「数学の輪」に参加してくださった blog をまとめてくださいました。d:id:gould2007:20080429本来なら私がとりまとめをしてからリングを閉鎖すべきところでしたが、このような形でまとめてくださったことに感謝いたします。

「数学の輪」終了について

4 月末をもってはてなリングのサービスが終了することに伴い、リング「数学の輪」を閉鎖することにいたしました。今まで参加していただいた皆様、誠にありがとうございました。今後はまた違う形でよろしくお願いいたします。

何故宇宙の外側を調べなくて良いのか

今日は連載をお休みして、かがみさんのところで見つけてきたネタで書こうと思います。 「宇宙は閉じていて有限である」というお話は皆さんも聞いたことがあるかと思います。では、宇宙の外側はどうなっているのか ? 答は、「そんなもの考えても意味がない」…

ε - δ 論法(その 4)

いくつかの例 1. を正の数として とおきます([・] は Gauss 記号)。このとき N は にのみ依存する自然数で、Gauss 記号の定義により が成り立ちます。したがって逆数を取れば であり、よって ならば なので 2. 、ただし ならば自明なので、 とします。 とお…

ε - δ 論法(その 3)

さて、前回名前が出てきた 論法とは、いったいどんなものなのでしょうか。 基本となる考え方は 数列がある値に収束するならば、数列の十分先は、その値に十分近いところに全て収まっているであろう というものです。この考え方を頭に入れて、数列の収束の定…

ε - δ 論法(その 2)

前回の続きです。 前回の正解は「ある値には近づかない」です。何故でしょうか ? 例えば というように、 をはずすように を大きくしていくと、この数列は 0 に近づきます。しかし、 のように、常に の形をしているように を大きくしていくと、この数列は常に…

ε - δ 論法(その 1)

皆さんは高校のとき、「極限」をどのように習ったでしょうか。おそらく 数列 が、 を大きくしたとき限りなく に近づくとき、 と表す みたいな感じで習ったと思います。しかし 限りなく に近づく とはどういうことなのでしょうか。次の数列を考えてみてくださ…

Lebesgue - Stieltjes 測度と Radon - Nikodym 微分(その 8・最終回)

補題 3 の証明(後半) さて、前半の最後に書いた式 が示されれば となって補題 3 が示されたことになります。そこで となる があったとして矛盾を導きます。 はある に含まれているはずです。この がある に含まれていることが示されれば矛盾が得られるので、…