Lebesgue - Stieltjes 測度と Radon - Nikodym 微分(その 8・最終回)

補題 3 の証明(後半)

さて、前半の最後に書いた式
\bigcup\tilde{B_n}\supset A
が示されれば
m^*(A)\leq\sum m(\tilde{B_n})=5^d\sum m(B_n)
となって補題 3 が示されたことになります。そこで
x\in A,x\not\in\tilde{B_n}(n=1,2,\dots)
となる x があったとして矛盾を導きます。
x はある B\in\mathcal{B} に含まれているはずです。この B がある \tilde{B_k} に含まれていることが示されれば矛盾が得られるので、証明が完成します。
さて、B\cap B_k\not=\emptyset なる B_k が存在することを示しましょう。仮定により \sum m(B_n)<\infty なので m(B_n)\to 0。従って {\rm diam}B_{n+1}<\frac12{\rm diam}B であるような n が存在します。このとき、B_{n+1} の選び方から {\rm diam}B>\delta_{n+1} です。よって \delta_{n+1} の定義から
B\cap B_k=\emptyset(k=1,2,\dots,n)
とはなり得ません。
そこで、kB\cap B_k\not=\emptyset なる最初の番号とすれば、\delta_k\geq{\rm diam}B なので B_k の選び方により {\rm diam}B_k>\frac12{\rm diam}B です。
一方で B\cap B_k\not=\emptyset であることから、B に属する点で B_k の中心から最も遠い点であっても、その距離は
\frac12{\rm diam}B_k+{\rm diam}B<\frac52{\rm diam}B_k=\frac12{\rm diam}\tilde{B_k}
を超えることはありません。従って B\subset\tilde{B_k} が成り立ち、矛盾が示されたので補題 3 の証明は完了しました。
だいぶ間が空いてしまいましたが、かくして当初の目的であった定理は証明され、絶対連続な関数はほとんどいたるところ微分可能で、かつそれは Radon-Nicodym 微分の結果と一致することが分かったわけです。Radon-Nicodym 微分は決して特殊なものではなく、通常の意味での微分の拡張に過ぎない、ということが分かったところで、今回はお開きにしたいと思います。