自然数から整数へ、そして有理数へ(その 5)

今回は後々使う事実からまず証明していきます。

定理

{a,b}{\omega} の元とするとき
{a\geq b\Leftrightarrow\exists c(c\in\omega\wedge a=b+c)}

(証明)
右から左に関しては {b\geq b,c\geq 0} から
{a=b+c\geq b+0=b}
なので成り立つ.
左から右を示すため命題 {P(n)} として
{n\geq 1\Rightarrow\exists m(m\in\omega\wedge n=m^+)}
を用意し, まずこれを示す.
{P(0)} は真である. {P(n)} が成り立つと仮定する. このとき {n^+=n+1\geq 1} であり, {m} として {n} をとればよいから {P(n^+)} も成り立つ.

さて {a\geq b} とし,
{S=\{n\in\omega|b+n\geq a\}}
とおく. {b+a\geq a} であるから {a\in S} なので {S\ne\emptyset}. {\omega} が整列集合であることはすでに示したので {\min S} が存在する. これを {c} とおく.
このとき {b+c\geq a} であるが {c=0} ならば {b\geq a} となり, {a\geq b} と合わせて {a=b=b+0} であるから成り立つ. {c\gt 0} ならば {c\geq 1} だから, 先に示した命題により {c=d^+} を満たす {d\in\omega} が存在する. {d\lt d^+} だから {d\not\in S} なので
{b+d\lt a\leq b+d^+=(b+d)^+}
となり {a=b+d^+=b+c}. (終)

この定理と、自然数の大小に関して
{a\gt b,a=b,a\lt b}
のうちのどれか一つだけが成り立つことを合わせると、任意の二つの自然数 {a,b} について
{a=b+c(c\in\omega-\{0\}),a=b,b=a+c(c\in\omega-\{0\})}
のどれか一つだけが成り立つことがわかります。(続く)