ε - δ 論法(その 2)

前回の続きです。
前回の正解は「ある値には近づかない」です。何故でしょうか ?
例えば n=1,2,4,\dots,2^m,\dots というように、10^m をはずすように n を大きくしていくと、この数列は 0 に近づきます。しかし、n=1,10,100,\dots,10^m,\dots のように、常に n=10^m の形をしているように n を大きくしていくと、この数列は常に 1 という値であり、0 には近づきません。数列がある値に近づくのならば、それは n を大きくする方法によらずに同じ値であって欲しいはずなので、これは不都合ですね。
しかし、数列がある値に「収束する」という概念があいまいなままでこのような議論をしていても、いまいちピンとこないはずです。実際、上の説明で納得できた人は少ないと思います。
そこで「収束する」という概念を、誰にでも(?)わかるように、厳密な形で定義しよう、という趣旨で考え出されたのが、\varepsilon 論法(あるいは \varepsilon-N 論法)と言われるものです。
次回から、この ε 論法を詳しく解説していきたいと思います。