Young 図形と対称群の表現(その 3)

以下、断らない限り K は標数 0 の代数閉体とします。*1

既約性判定

Schur の補題によって、既約な G-加群 V に対して {\rm End}_G V\stackrel{\sim}{=}K であることがわかりました。ところが、実はこの逆も成り立ちます。以下、その証明をしましょう。
G-加群 V に対して、マシュケの定理により、同型なものを同一視して
V={W_1}^{m_1}\oplus\cdots\oplus{W_r}^{m_r}
と直和分解が出来ます。ここで各 W_i は既約で i\neq j\Rightarrow W_i\not{\stackrel{\sim}{=}}W_j です。このとき m_i=(W_i:V) と書いて、V における W_i重複度と言います。
このとき {\rm Hom}_G(W_i,V) はベクトル空間として K^{m_i} に同型になります。何となれば Schur の補題によって
i\neq j\Rightarrow{\rm Hom}_G(W_i,W_j)=\{0\}
なので
\begin{align}{\rm Hom}_G(W_i,V)&={\rm Hom}_G(W_i,{W_1}^{m_1}\oplus\cdots\oplus{W_r}^{m_r})\\&={\rm Hom}_G(W_i,{W_1})^{m_1}\oplus\cdots\oplus{\rm Hom}_G(W_i,{W_r})^{m_r}\\&={\rm Hom}_G(W_i,W_i)^{m_i}\stackrel{\sim}{=}K^{m_i}.\end{align}
同様に {\rm Hom}_G(V,W_i)\stackrel{\sim}{=}K^{m_i} もわかります。
さて
\begin{align}{\rm End}_G V&={\rm Hom}_G(V,V)\\&={\rm Hom}_G({W_1}^{m_1}\oplus\cdots\oplus{W_r}^{m_r},V)\\&={\rm Hom}_G(W_1,V)^{m_1}\oplus\cdots\oplus{\rm Hom}_G(W_r,V)^{m_r}\end{align}
ですから、先の事実により、右辺の K 上ベクトル空間としての次元は {m_1}^2+\cdots+{m_r}^2 です。一方で、もし {\rm End}_G V\stackrel{\sim}{=}K ならば左辺の次元は 1 ですから、
{m_1}^2+\cdots+{m_r}^2=1
が成り立たなければならず、このとき m_i=1,m_j=0(j\neq i) を満たすような i が存在します。従って V\stackrel{\sim}{=}W_i (既約)となり、V が既約 G-加群であることが示されます。

どことなく似ている ?

さて、群環 K[G] の正則表現 \rho:K[G]\to {\rm End}(K[G]) から導かれる G の表現 \pi:G\to GL(K[G]) を考えます。
K[G] は言うまでもなく G-加群でもあります。そこで G が有限群のときマシュケの定理によって
K[G]={V_1}^{m_1}\oplus\cdots\oplus{V_r}^{m_r}
と直和分解できたならば、上の議論により K 上の次元を比較して
|G|={m_1}^2+\cdots+{m_r}^2
という等式が導き出されます。ところで対称群 S_n の位数は n ! でしたから、G=S_n とすれば
n!=\sum\limits_{i=1}^r{m_i}^2
なる等式が現れます。最初に紹介した式と、どことなく似ていますね。(続く)

*1:標数を 0 にするのは、G の位数と関わりなくマシュケの定理を使いたいからです。