以下、断らない限り K は標数 0 の代数閉体とします。*1
既約性判定
Schur の補題によって、既約な G-加群 V に対して であることがわかりました。ところが、実はこの逆も成り立ちます。以下、その証明をしましょう。
G-加群 V に対して、マシュケの定理により、同型なものを同一視して
と直和分解が出来ます。ここで各 は既約で です。このとき と書いて、V における の重複度と言います。
このとき はベクトル空間として に同型になります。何となれば Schur の補題によって
なので
同様に もわかります。
さて
ですから、先の事実により、右辺の K 上ベクトル空間としての次元は です。一方で、もし ならば左辺の次元は 1 ですから、
が成り立たなければならず、このとき を満たすような i が存在します。従って (既約)となり、V が既約 G-加群であることが示されます。
どことなく似ている ?
さて、群環 K[G] の正則表現 から導かれる G の表現 を考えます。
K[G] は言うまでもなく G-加群でもあります。そこで G が有限群のときマシュケの定理によって
と直和分解できたならば、上の議論により K 上の次元を比較して
という等式が導き出されます。ところで対称群 の位数は n ! でしたから、 とすれば
なる等式が現れます。最初に紹介した式と、どことなく似ていますね。(続く)