Schur の補題
さて、全くもって一般の話になるのですが
が成り立ちます。 は明らかですが、 の証明も難しくはありません。 を取ったとき、f(M) は {0} でない N の部分 R-加群なので、N の既約性から f(M) = N となって f は全射です。一方 は M でない M の部分 R-加群なので、M の既約性から となり、f は単射にもなります。従って同型 が成り立つ、と言うわけです。これは任意の が同型写像である、と言っているわけですから、Schur の補題で N = M とおけば
は体(一般には斜体 = 非可換体)となることがわかります。
さて、有限群 G の表現空間 V とは、G-加群 V、すなわち K[G]-加群 V のことでした。従って Schur の補題を応用すると、V , W が既約な G-加群で
ならば であることがわかります。そして は体になります。が、実は、単に体であるだけでなく、K が代数閉体ならば
が成り立ってしまうのです ! 以下、それを証明してみましょう。まず
なので、 は K を含んでいると看做せます。そこで を任意に取って、K の f による単拡大 K(f) を考えると、これは の部分体で、なおかつ可換です。ときに、 は K 上有限次元のベクトル空間なので、K(f) も K 上有限次元、つまり K(f) は K の有限次拡大です。ところが K は代数閉体ですから、真の有限次拡大体を持ちません。従って K(f) = K となり がわかります。かくして が示されました。群の表現論では、この事実もやはり Schur の補題と呼んでいます。(続く)