Young 図形と対称群の表現(その 2)

Schur の補題

さて、全くもって一般の話になるのですが

Schur's lemma(シューアの補題)
M , N が既約な R-加群{\rm Hom}_R(M,N)\neq\{0\}\Leftrightarrow M\stackrel{\sim}{=}N

が成り立ちます。\Leftarrow は明らかですが、\Rightarrow の証明も難しくはありません。{\rm Hom}_R(M,N)\ni f\neq 0 を取ったとき、f(M) は {0} でない N の部分 R-加群なので、N の既約性から f(M) = N となって f は全射です。一方 {\rm Ker}f は M でない M の部分 R-加群なので、M の既約性から {\rm Ker}f=\{0\} となり、f は単射にもなります。従って同型 f:M\stackrel{\sim}{\to}N が成り立つ、と言うわけです。これは任意の {\rm Hom}_R(M,N)\ni f\neq 0 が同型写像である、と言っているわけですから、Schur の補題で N = M とおけば
{\rm End}_R M={\rm Hom}_R(M,M)
は体(一般には斜体 = 非可換体)となることがわかります。
さて、有限群 G の表現空間 V とは、G-加群 V、すなわち K[G]-加群 V のことでした。従って Schur の補題を応用すると、V , W が既約な G-加群
{\rm Hom}_G(V,W)={\rm Hom}_{K[G]}(V,W)\neq\{0\}
ならば V\stackrel{\sim}{=}W であることがわかります。そして {\rm End}_G V は体になります。が、実は、単に体であるだけでなく、K が代数閉体ならば
{\rm End}_G V\stackrel{\sim}{=}K
が成り立ってしまうのです ! 以下、それを証明してみましょう。まず
K\stackrel{\sim}{=}K({\rm id}_V)\subset{\rm End}_G V
なので、{\rm End}_G V は K を含んでいると看做せます。そこで f\in{\rm End}_G V を任意に取って、K の f による単拡大 K(f) を考えると、これは {\rm End}_G V の部分体で、なおかつ可換です。ときに、{\rm End}_G V は K 上有限次元のベクトル空間なので、K(f) も K 上有限次元、つまり K(f) は K の有限次拡大です。ところが K は代数閉体ですから、真の有限次拡大体を持ちません。従って K(f) = K となり f\in K がわかります。かくして {\rm End}_G V\stackrel{\sim}{=}K が示されました。群の表現論では、この事実もやはり Schur の補題と呼んでいます。(続く)