数学におけるランダムの定義

数学において、ランダムとはそもそも何でしょうか。それは「起こりうる全ての事象が全て等しい確率で起こるような確率空間を与える」ことに他ならず、言わば神から与えられたような代物です。実際に行われたある試行がランダムかどうか、厳密に調べる術は、おそらくないでしょう。
しかし、ランダム「でない」かどうかを調べる術は幾つか存在します。例えば、5,120,000 人の人に「10 桁の 0 と 1 のランダム列を書いてください」とお願いしたとしましょう。このとき、d:id:redcat_math:20051118 で書いたとおり、(弱)大数の法則によって、適当な小さい正の数 \epsilon に対して
P\left(\left|\frac{h}{5120000}-\frac{1}{512}\right|>\epsilon\right)<\epsilon
が成り立ちます。ただし h は「同じ数字だけを 10 個並べて書いた人の人数」とします。この式が言わんとすることは「同じ数字だけを 10 個並べて書いた人の人数が 10,000 人より大幅に多かったり少なかったりすることは稀である」ということです。
しかし、実際に試したわけではありませんが、おそらく実際に同じ数字だけを 10 個並べて書く人は、10,000 人より大幅に少ないのではないでしょうか。なぜならば、mathesis さんが仰るように

人は無意識に
「ランダムなら、同じ数字がいくつも続くことはありえない」
と思っている

からです。とすれば、人間が作り出した「ランダム」な 0-1 列は、(弱)大数の法則という基本的な事実だけを用いているにもかかわらず、(数学的には)明らかにランダムではありえない、と結論付けられるのです。