級数と Lebesgue 積分(その 1)

積分、と聞くと、何かユークリッド空間内の領域上での積分を想像する人が多いのではないでしょうか。もちろん、ユークリッド空間内の領域上での積分に対するイメージが根源にあるのは確かなのですが、それを一般化することによって、様々な応用がなされるようになりました。
その最たるものが確率論であることは、論を待たないでしょう。ルベーグ積分における有用な結果が確率論に適用され、多くの重要な結果が得られています。
今回は、無限級数ルベーグ積分とみなせることと、そのことによって得られるいくつかの応用を述べたいと思います。

可測集合と可測空間

以下、S を集合とします。S の部分集合の族 \mathcal{F}

  1. S\in\mathcal{F} および \emptyset\in\mathcal{F}
  2. M_1,M_2\in\mathcal{F} ならば M_1\cup M_2,M_1\cap M_2\in\mathcal{F}
  3. M\in\mathcal{F} ならば M^c=S\setminus M\in\mathcal{F}

を満たすとき、\mathcal{F}集合体であると言います。
もし集合体 \mathcal{M}
M_1,M_2,\ldots\in\mathcal{M} ならば \bigcup\limits_{i=1}^\infty M_i,\bigcap\limits_{i=1}^\infty M_i\in\mathcal{M}
を満たすとき、\mathcal{M}\sigma 集合体 であると言います。
S 上の \sigma 集合体 \mathcal{M} が与えられているとき、対 (S,\mathcal{M})可測空間、また \mathcal{M} に属する元(S の部分集合)を可測集合と言います。

可測関数

可測空間 (S,\mathcal{M}) 上の(\pm\infty を値に取ることも許す)実数値関数 f に対して
\{s\in S|f(s)>\alpha\}\in\mathcal{M}
が任意の実数 \alpha に対して成り立つならば、f は可測関数であると言います。f が複素数値のときは、f の実部・虚部が共に(実数値関数として)可測関数であるとき、可測関数であると言います。

測度と測度空間

可測空間 (S,\mathcal{M}) が与えられているとき、M\in\mathcal{M} に一つの値を対応させる関数 \mu

  1. 0\leq\mu(M)\leq\infty
  2. \mu(\emptyset)=0
  3. M_1,M_2,\ldots\in\mathcal{M},M_j\cap M_k=\emptyset(j\neq k) ならば \mu\left(\bigcup\limits_{i=1}^\infty M_i\right)=\sum\limits_{i=1}^\infty\mu(M_i)

を満たすならば、これを \mathcal{M} 上の測度と言い、測度 \mu が与えられた可測空間 (S,\mathcal{M},\mu)測度空間と言います。(続く)