直感と相容れない確率

40 人の人が、10 枚のコインを一度に投げるとします。このとき、10 枚が全て表になる確率、及び、10 枚が全て裏になる確率は、それぞれ 1/1024 です。したがって、40 人のうち、少なくとも一人が 10 枚とも全て表、もしくは裏になる確率は
1-\left(\frac{2^{10}-2}{2^{10}}\right)^{40}=0.0752\ldots
で、約 7.5%。決して起こらないことではありません。
しかし、私達は、\frac{2}{1024}=0.00195\ldots という低い確率の出来事が、そんなに簡単に起こるわけがない、と考えてしまいがちです。
このずれは一体何でしょうか。それは、数学的に確立された確率論の下での結論と、私達の確率に対する感覚の違いに他なりません。
「直観」と「直感」は、音が同じであることからよく勘違いされやすいのですが、「直観」とは「ものの本質を見抜くこと」であり、これは数学とは相容れるものです。
しかし「直感」は数学とは相容れません。例えば、初めて多様体を勉強すると、ほとんどの人はドーナツの表面のようなものを思い浮かべるでしょう。でも、実際には Grassmann 多様体のように、そのような捉え方をしないほうが都合の良い多様体もたくさんあります。
一部で「誕生日問題」が議論になっていますが、これは「直感」が数学と相容れないことを示す典型例といえます。このように、「直感」が通用しないところが、数学の難しさなのかもしれません。「直感」と「直観」のずれを測るような理論が構築できれば面白いとは思いますが…。