ε - δ 論法(その 13)

不連続点の種類

さて、今度は連続でない例を挙げることにします。
f(x)=\left\{\begin{array}\frac{\sin x}{x}&(x\neq 0)\\0&(x=0)\end{array}\right.
とおくと、良く知られているように
\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}=1\neq 0=f(0)
ですから、これは x = 0 で連続ではない例になっています。ところが、x = 0 のときの値を取り換えて
g(x)=\left\{\begin{array}\frac{\sin x}{x}&(x\neq 0)\\1&(x=0)\end{array}\right.
としてしまえば、今度は x = 0 でも連続になります。だから、この例は、不連続と言っても連続との差は微々たるものと言えます。

では、次の例はどうでしょう。
f(x)=\left\{\begin{array}\frac{x}{|x|}&(x\neq 0)\\0&(x=0)\end{array}\right.=\left\{\begin{array}1&(x>0)\\0&(x=0)\\-1&(x<0)\end{array}\right.
今度は f(0) をどう入れ換えても、f(x) は x = 0 で連続にはなりません。この例では
f(+0)=1\neq -1=f(-0)*1
となっていることが、その唯一にして最大の理由になっています。

以上の例のような不連続点、すなわち右極限と左極限がともに存在するが、その値が定義された関数の値と一致しないような点のことを第一種不連続点と言います。これは、不連続点の中でも連続にもっとも近いものと言えます。

第一種があるのなら第二種もあるのか、とお思いでしょうが、もちろんあります。それは右極限・左極限のうち少なくとも一方(あるいは両方)が存在しないものです。
f(x)=\left\{\begin{array}\frac{1}{x}&(x\neq 0)\\a&(x=0)\end{array}\right.
はその最たる例と言えます(a はどんな実数値でも良い)。

次回は、連続関数の四則演算に関する性質と、連続関数の合成に関することを述べます。

*1:f(0+0)f(+0) などのように略記します。