ε - δ 論法(その 12)

右極限・左極限

関数 f(x) において、変数 x が実数値のときには、x が有限の値 a に近づく方法は二通りある、と前回書きました。そこで次の定義をおきます。

定義 3

\lim_{x\to a+0}f(x)=b であるとは、任意の \varepsilon>0 に対して \delta>0 が存在して
a<x<a+\delta\Rightarrow|f(x)-b|<\varepsilon
となることである。これを右極限と言い、f(a+0) で表す。
\lim_{x\to a-0}f(x)=b であるとは、任意の \varepsilon>0 に対して \delta>0 が存在して
a-\delta<x<a\Rightarrow|f(x)-b|<\varepsilon
となることである。これを左極限と言い、f(a-0) で表す。
b=\pm\infty の場合の定義は類推してください。

このように定義しておくと、極限が存在する(= 収束する)とは、右極限と左極限がともに存在して、両者が一致することである、と言い換えることができます。なお、各種極限について、一般にその値が \pm\infty になる場合は「極限が存在する」とは言わず、数列のとき同様「発散する」と言います。もちろん \lim_{x\to\infty}\sin x のように、収束も発散もしないケースも、数列のときと同様に存在します。

極限と連続

さて、一般に \lim_{x\to a,x\neq a}f(x) が存在しても、それが実際の x = a における f(x) の値 f(a) に一致するとは限りません。両者が一致するとき、すなわち \lim_{x\to a}f(x)=f(a) のとき、f(x) は x = a で連続であると言います。言い換えれば

任意の \varepsilon>0 に対して \delta>0 が存在して
|x-a|<\delta\Rightarrow |f(x)-f(a)|<\varepsilon
が成り立つ

ことが連続の定義です。
f(x) の値が定義されているような x の全体の集合を定義域(domain)と言いますが、定義域の各点で連続であるような関数のことを単に連続関数と呼びます。一番わかりやすいのは \log x でしょう。これは x > 0 でしか定義されませんが、任意の x = a > 0 で連続です。また \frac{1}{x} も、x ≠ 0 が定義域で、その定義域の各点でやはり連続です。
次回は不連続な点を持つ関数の例を挙げることにします。