Affine 平面(その 5・最終回)

最後に、予告通り Affine 平面上の直線の数について特定しておきます。

命題 3

n 次の Affine 平面において、一点を通る直線は (n + 1) 本存在する
(証明)
Affine 平面上の任意の点 p を取り、p と異なる点 x_0 を取る。このとき、公理 3 により、直線 px_0 上にない点 x_1 の存在が保障されるので、x_1 を通り直線 px_0 に平行な直線を取り、l とする。l の上には x_1 を含め n 個の点 x_1,\dots,x_n が存在するので、結局 p を通る直線 px_0,px_1,\dots,px_n が作れ、これらはどの 2 本も互いに平行でない。これら以外に p を通る直線があるとすれば、それは l と交点を持つから、明らかに矛盾である。

定理 3.1

n 次の Affine 平面には n(n + 1) 本の直線が存在する。
(証明)
Affine 平面上には n^2 個の点が存在し、その各点を通る直線は (n + 1) 本あるから、重複も含めて数えれば、直線の数は n^2(n+1) 本である。しかし、1 本の直線には n 個の点が存在するので、この数え上げは、1 本の直線を n 回重複して数えていることになるから、結局直線の総数は
\frac{n^2(n+1)}{n}=n(n+1)
となる。

定理 3.2

n 次の Affine 平面には、平行な n 本の直線の組がちょうど (n + 1) 個ある。
(証明)
命題 3 により、1 点を通る直線は (n + 1) 本あり、それらは互いに平行でない。したがって、その各直線に対して平行な n 本の直線の組が (n + 1) 個あり、n(n + 1) 本の直線が出来上がる。Affine 平面上にはこれ以上の直線は無いから、これが全てである。

定理 3.2 は、後ほど紹介する射影平面で必要になる定理なので、ここで証明しておきました。

以上、Affine 平面について簡単に述べてきました。もっとも分かりやすい Affine 平面は、体 K に対する K^2 です。今回は有限の場合に限って話を進めましたが、もちろん n が無限のとき(可算無限、非可算無限問わず)でも同じ議論が成り立ちます。特に有限 Affine 平面は、魔方陣と大いに関係があるのですが、その話はまた後日にしたいと思います。

参考書籍

幾何の魔術―魔方陣から現代数学へ

幾何の魔術―魔方陣から現代数学へ