今日から数回に分けて、群の表現と行列の Jordan 標準形の関係についてお話したいと思います。
あまり一般化するとややこしくなる(というより、私自身が詳しくない)ので、G は有限群、K は標数が 0 の代数閉体とします。
K 上のベクトル空間 V があって、G から、V 上の線型自己同型写像の全体がなす群 への準同型
が与えられているとしましょう。このとき、アタリマエですが
- のとき
- のとき
が成り立っています。このとき、V は G 加群であると言います。また、V が有限次元ならば、 とおくと なので、V の基底を一組定めることで とみなせますから、自然に準同型 *1 が定まり、もし が単射ならば、G をあたかも の部分群であるかのように思うことが出来ます。これは、抽象的(かも知れない)群 G を、よく知られている群 の中で「表現」したことになります。
これに倣って、群の準同型 のことを G の(線型)表現と言い、V のことを表現空間と言います。
一つ、具体的な例を挙げましょう。3 次対称群
に対して
と定めれば、 は群の準同型なので、これは立派な の線型表現です。また、
と定めると、 も群の準同型なので、 の別の表現を得ます。このように、群の表現は一通りとは限らないため、ある群 G の可能な表現はどれだけあるのか、ということが興味の対象になります。これが「表現論」と言われるものです。(続く)
*1:もう V は基底を決めていますので、ここで記号を濫用して同じ を用いています。