ポアンカレ予想を困難にさせていたもの(続き)

先日の記事に頂いたコメントに、この場を借りてお返事。

Whitehead の定理とは、この文脈では

X , Y を高々 n 次元の多面体とし、f : X → Y を連続写像とする。f が導くホモトピー群準同型写像 f_*:\pi_i(X)\to\pi_i(Y)1\leq i\leq n に対して同型であるならば、f はホモトピー同値である。

を意味しています。証明は小松・中岡・菅原著「位相幾何学 (1) (現代数学 6)」(岩波書店)に載っています。

参考書としては本間著「組合せ位相幾何学」(共立全書 231)が挙げられますが、おそらく入手困難と思われますので、詳細を書いておきます。Hurewicz 同型
h:\pi_3(M,x_0)\to H_3(M;\mathbb{Z})
による H_3(M;\mathbb{Z}) の生成元 α の逆像 h^{-1}(\alpha)[f] とおきます(ただし f:(S^3,p)\to(M,x_0))。
\pi_3(S^3,p)\stackrel{\sim}{=}\mathbb{Z} の生成元は恒等写像 1:(S^3,p)\to(S^3,p)ホモトピー[1] で与えられ、定義により f_*[1]=[f] なので
f_*:\pi_3(S^3,p)\to\pi_3(M,x_0)
は同型。また、1 次と 2 次のホモトピー群は自明なので、
f_*:\pi_i(S^3,p)\to\pi_i(M,x_0)
i = 1, 2 に対しても同型。故に Whitehead の定理により fホモトピー同値写像となります。