円周率を解析的に定義する(後編)
長くなりそうなのでセクションに分けていきます。
指数関数と指数法則
級数 の収束半径は無限大です。そこで任意の に対して と定義します。 とおくと、任意の実数 に対して が成り立つため、複素数 に対しても と書きます。ここで大事なことは、指数法則
が成り立つことです。証明は省略します。
三角関数の加法定理
の定義式で を に置き換えると
… (1)
が成り立ちます(前編で定義した三角関数は変数が複素数でも定義できます)。(1) で と置き換えると
… (2)
が成り立つので、(1) と (2) を辺辺掛けて
… (3)
が成り立ちます。また (1) と (2) で辺辺加えたものと引いたものを考えれば
が成り立つことも分かります。これと指数法則から
という、三角関数の加法定理が導けます。
三角関数の周期
前編で定義した について が成り立つことは既に分かっています。これと (3) から
が成り立ちますが、 なので 、したがって
です。これと加法定理から
… (4)
が分かります。(4) で として
… (5)
(5) で として
… (6)
が分かります。これは が周期関数であり、かつその周期が であることを意味しています。
複素数の偏角
を実数として とおくと なので、 は実数から複素平面上の単位円 への写像になりますが、特に から への全単射になります。
指数法則から直ちに であり、また のとき も分かります。逆に とすると、 となる整数 がただ一つ決まり、 とおけば なので となりますから
が成り立ちます。
0 でない複素数 に対し なので、
を満たす実数 が の整数倍の差を除いて一意に定まります。この のことを の偏角といい、 で表します。絶対値 、偏角 の複素数 に対して とすると
なので
となり、これが三角関数の幾何学的な意味になります。
円周と直径の比が円周率
複素平面において中心 、半径 の円は
と表すことができます。このとき円周の長さ は
となるので です。 は直径ですから、円周の長さと直径の比が円周率であることが分かります。