Lebesgue - Stieltjes 積分(その 16)

本題に進む前に、もう少しだけ寄り道していきます。
(S,\mathcal{M},\mu) を任意の測度空間として、fS 上非負の可積分関数とします。このとき
g(x)=\mu(\{f\leq x\})
とおいて、これを f分布関数と言います。分布関数は単調増加*1になるので、その Lebesgue - Stieltjes 測度が定義できますが、このとき、(0,\infty) 上で定義される非負の Borel 可測関数 \varphi に対して
\int\varphi(f(s))d\mu(s)=\int\varphi(x)dg(x) … (*)
が成り立つことを示します。
まず、0<a<b<\infty として \varphiJ=(a,b) 上の定義関数の場合を考えると、左辺は \mu(\{a<f<b\}) に等しく、右辺は
g(b-0)-g(a+0)=\mu(\{f<b\})-\mu(\{f\leq a\})
となるので、両辺は一致します。
J=(a,b],[a,b),[a,b]
の場合も同様です。
一方で、「ある有限区間 [a,b] の外で 0 かつ (*) を満たし、さらに一定値 \gamma で抑えられるような関数の全体」は、優収束定理により、極限操作について閉じています。また、このような関数の全体は、上記で見たように、区間の定義関数の線型結合を全て含むので、結局有界な Borel 可測関数全体を含むことになります。
有界でない Borel 可測関数 \varphi については
[\varphi]^n(x)=\left\{\begin{array}{ll}\varphi(x)&(\varphi(x)<n)\\n&(\varphi(x)\geq n)\end{array}\right.
とおくと [\varphi]^n に対して (*) が成り立ち、かつ [\varphi]^n\uparrow\varphi なので、単調収束定理により、\varphi についても (*) が成り立ちます。
最後に \varphi が有限区間の外で 0 という性質を持たないときは
\varphi_n(x)=\left\{\begin{array}{ll}\varphi(x)&(\frac1n\leq x\leq n)\\0&(0<x<\frac1n,n<x)\end{array}\right.
とすれば、\varphi_n については (*) が成り立ち、また \varphi_n\uparrow\varphi なので、再び単調収束定理によって \varphi も (*) を満たすことが分かります。

*1:さらには右連続、すなわち g(x+0)=g(x) になります。