以下、通常の意味での測度を正測度と呼ぶことにします。
測度の絶対連続
を測度空間 上の積分可能な関数とするとき
は実測度です。この実測度は次の性質を持ちます。
- ならば
- 任意の に対して、適当に を取れば が成り立つ。
二番目については
とおけば だから単調収束定理により
が成り立ちます。従って任意の に対して
となる を固定して とおけば、 のとき
ところで、上記の実測度に限らす、 上の実測度 において、性質 1 が成り立つことと性質 2 が成り立つことは同値になります。 は明らかなので を示せば良いのですが、1 の性質は、 の正部分・負部分にそれぞれ受け継がれるので、それらに対して性質 2 が成り立つことが示されれば、元の実測度に対しても性質 2 が成り立つことは容易にわかります。従って は正の実測度、すなわち有限正測度であるとして一般性を失いません。そこで、有限正測度 で、性質 1 を満たし性質 2 を満たさないものがあったと仮定します。このとき、 があって どんな に対しても
となる が存在します。そこで
となるように を取ると に対して
すると で
となるので性質 1 が成り立たないことになり矛盾します。
さて、可測空間 上の二つの正測度 に対して次の定義を設けます。
が成り立つとき、 は に対して絶対連続であると言います。これを記号で と表します。また、
となる が存在するとき は互いに特異であると言い、これは記号 で表します。なお、実測度に対しては、絶対変分が同様の条件を満たすときに、やはり同じ用語を用います。
最初に述べたことは、測度空間 上の積分可能な関数 によって
と定義される実測度 は に対して絶対連続である、ということです。そして実は、適当な条件の下でその逆が成立します。それが Radon - Nikodym の定理なのですが、それはまだ後の話です。