直積と直和
圏 の二つの対象 を固定します。
このとき が直積であるとは、任意の対象 と射 に対して
を満たす射 が一意的に存在するときを言います。
またこのような一意的な射のことを と表します。
このような性質を満たす対象を と書いたりしますが、圏の世界では、この対象は一意には定まりません。あくまで同等を除いて一意*1でしかなく、特定の性質を満たす普遍的な存在なのです。しかし、このことは、「同等なものは同じとみなす」という、いわゆる分類学の観点に立てば、この性質はありがたいものです。
なお、圏 と圏 において、それぞれの集合論、および群論の意味での直積が、圏の意味でも直積の性質を満たしていることは明らかです。
ところで、この射の向きをひっくり返すと直和の定義が得られます。すなわち が直和であるとは、任意の対象 と射 に対して
を満たす射 が一意的に存在するときを言います。
このような性質を満たす対象を と書いたりします。
圏 においては、集合論の意味での直和
が圏の意味での直和の性質を満たしますが、圏 における二つの対象 の圏論の意味での直和は、自由積 になります。証明は難しくないので、頭の体操(?)として残しておきます。
なお、任意の二つの対象に対して直積が存在する圏のことをデカルト圏(cartesian category)と言います。
*1:このことは練習問題にしましょう。