差核と双対差核
圏 の対象 と、射 を固定します。このとき が
- で なるものが存在すれば、 で を満たすものが一意的に存在する
の二つの条件を満たすとき、 と の差核(difference kernel)または等化(equalizer)であると言います。
またこのとき、対象 のことを と書きます。
差核 が存在すれば、それは単射になります。実際 を の差核とし、 とします。このとき
を示せば良いわけですが、各 に対して
とすると が成り立つので、 を満たす射 が一意に存在します。このとき が成り立つことは明らかでしょう。
さて、直積に対する直和の定義と同様、射の向きを逆にすると双対差核(difference cokernel)(または余等化(coequalizer))の定義を得ます。それは圏 の対象 と、射 に対して が
- で なるものが存在すれば、 で を満たすものが一意的に存在する
の二つの条件を満たすもののことです。
このときの対象 を と書きます。差核の場合と同様の方法で、双対差核も、存在すればそれは全射になることが証明できます。
さて、「双対」という言葉が出てきました。「双対」とは、要するに射の向きを逆向きに考えたときに現れる概念なのですが、詳しい種明かしはもう少し後にしたいと思います。
「双対」の意味が分かれば、直和のことを「双対直積」とも言うことがあるのが、容易に理解できるかと思います。