圏論への誘い(その 13)

左随伴と右随伴は双対である

関手 U:\mathcal{C}\to\mathcal{D} が与えられたとき、それは反変関手 U:\mathcal{C}^{\rm op}\to\mathcal{D} を与えますが、f^{\rm op}:a\to b(すなわち f:b\to a)、g^{\rm op}:b\to c(すなわち g:c\to b) に対して U(f^{\rm op}):U(a)\to U(b) とは U(f):U(b)\to U(a) のことですから U(f^{\rm op})=U(f)^{\rm op} です。同様に U(g^{\rm op})=U(g)^{\rm op} なので
\begin{align}U(g^{\rm op}\circ f^{\rm op})&=U(f\circ g)\\&=U(f)\circ U(g)\\&=U(g)^{\rm op}\circ U(f)^{\rm op}\\&=U(g^{\rm op})\circ U(f^{\rm op})\end{align}
となり、結局(共変)関手 U:\mathcal{C}^{\rm op}\to\mathcal{D}^{\rm op} が与えられたことになります。
さて、F:\mathcal{D}^{\rm op}\to\mathcal{C}^{\rm op}U:\mathcal{C}^{\rm op}\to\mathcal{D}^{\rm op} の左随伴関手であるとき、自然な同型
\hom_{\mathcal{C}^{\rm op}}(Fb,a)\simeq\hom_{\mathcal{D}^{\rm op}}(b,Ua)
がありますから、これを書き直すと
\hom_{\mathcal{C}}(a,Fb)\simeq\hom_{\mathcal{D}}(Ua,b)
ということになります。従って F は U の右随伴関手になっています。このように、左随伴と右随伴は、互いに双対の概念になっています。

極限と余極限

二つの圏 \mathcal{C},\mathcal{D} に対し、関手 \Delta:\mathcal{C}\to\mathcal{C}^{\mathcal{D}} を以下のように定義します。
\mathcal{C} の任意の対象 x に対して関手 \Delta x:\mathcal{D}\to\mathcal{C} とは、\mathcal{D} の全ての対象に対して x を、また全ての射に対して id(x) を対応させるもの。
この関手 \Delta が右随伴を持つとき、それを \lim_{\leftarrow\mathcal{D}} と書いて極限と言い、また \Delta が左随伴を持つとき、それを \lim_{\rightarrow\mathcal{D}} と書いて余極限と言います。上で見たように、左随伴と右随伴は互いに双対の概念ですから、極限と余極限も互いに双対の概念です。