圏論への誘い(その 11)

関手の例

基本群

基点付き位相空間とその間の連続写像からなる圏 {\rm Top}_* を考えます。この圏の対象は、位相空間 X と、その基点 x_0\in X からなる組 (X,x_0) で、射 f:(X,x_0)\to(Y,y_0) とは、f が連続写像でかつ f(x_0)=y_0 であるもののことを言います。
このとき、(X,x_0) に対して、その基本群 \pi_1(X,x_0) を対応させることは、圏 {\rm Top}_* から圏 {\rm Grp} への共変関手を与えています。

忘却関手

群 G に対して、群としての構造を忘れ、G を単に集合として扱うことは、共変関手 U:{\rm Grp}\to{\rm Set} を与えます。このような関手を忘却関手(forgetful functor)と言います。

自然変換

\mathcal{C} から圏 \mathcal{D} への二つの関手 F,G:\mathcal{C}\to\mathcal{D} が与えられたとき、以下の性質を満たす t を F から G への自然変換(natural transformation)と言います。

  • \forall a\in O(\mathcal{C}) に対して \mathcal{D} における射 t_a:F(a)\to G(a) が対応する。
  • f:a\to b ならば G(f)\circ t_a=t_b\circ F(f)

関手の圏

二つの圏 \mathcal{C},\mathcal{D} が与えられたとき、新しい圏を

  • 対象は関手 F:\mathcal{C}\to\mathcal{D}
  • 射は自然変換 t:F\to G

で定めることが出来ます。これを \mathcal{D}^{\mathcal{C}} で表し、functor category と言います。