e の超越性(前編)

まず始めに h^r=r!(r\geq 0) なる記号を導入しておきます。これは「h の r 乗」ではなく、あくまでも記号であることに注意してください。また、多項式
f(x)=\sum_{r=0}^m c_r x^r
に対して
f(h)=\sum_{r=0}^m c_r h^r=\sum_{r=0}^m c_r r!
と定義します。また
f(x+h)=\sum_{r=0}^m\frac{f^{(r)}(x)}{r!}h^r=\sum_{r=0}^m f^{(r)}(x)
と定義します。f(x+y)=F(y) ならば f(x+h)=F(h) です。
さて、r\geq 0 に対し
u_r(x)=\frac{x}{r+1}+\frac{x^2}{(r+1)(r+2)}+\dots
と定義します。このとき簡単な計算で |u_r(x)|<e^{|x|} が分かります。そこで \epsilon_r(x)=e^{-|x|}u_r(x) とおけば |\epsilon_r(x)|<1 です。
以下、補題を二つ用意します。

補題 1

任意の多項式
\phi(x)=\sum_{r=0}^s c_r x^r
に対して
\psi(x)=\sum_{r=0}^s c_r \epsilon_r(x)x^r
とすると
e^x \phi(h)=\phi(x+h)+\psi(x)e^{|x|}
(証明)
\begin{align}(x+h)^r&=\sum_{k=0}^r\frac{r!}{(r-k)!}x^{(r-k)}\\&=r!\sum_{k=0}^r\frac{x^k}{k!}\\&=r!(e^x-\frac{x^r}{r!}u_r(x))\\&=r!e^x-u_r(x)x^r=e^x h^r-u_r(x)x^r\end{align}
だから
e^x h^r=(x+h)^r+u_r(x)x^r=(x+h)^r+e^{|x|}\epsilon_r(x)x^r
となるので、これの両辺に c_r を掛けて足し合わせると結論を得る。
続きは後ほど。