集合論の公理系(その 4)

さて、先刻の予告どおり、集合論の公理系の紹介を再開します。前回から一週間開きましたが、記号論理には慣れていただけたでしょうか ?

外延公理

外延公理
x=y\leftrightarrow\forall z(z\in x\leftrightarrow z\in y)

ここで、本来は x , y も全称記号で閉じて
\forall x\forall y(x=y\leftrightarrow\forall z(z\in x\leftrightarrow z\in y))
と書くべきですが、それを省略して書いています。こういった省略形は、以下断り無く使います。
さて、この公理が言っていることは、「集合に含まれる要素が一致すれば、それらは等しい」ということで、つまり、集合とは、そこに含まれる要素によって完全に決定される、ということです。

等号公理と外延公理

通常、等号を持つ記号論理の公理系に対して、等号公理と言われるものがあります。今考えている集合論の体系では

  1. x=x
  2. x=y\to y=x
  3. x=y\wedge y=z\to x=z
  4. x=y\wedge z\in x\to z\in y
  5. x=y\wedge x\in z\to y\in z

が等号公理です。しかし、最後の一つ以外は、外延公理と記号論理の公理を使って導くことが出来るため、実質、最後の一つが最も重要になります。通常は、より拡張された形での

  • x=y\wedge\varphi(x)\to\varphi(y)

の形で適用することがほとんどです。

部分集合

\varphi\equiv\psi と書いたとき、これは \varphi という論理式を \psi で定義する、の意味であると解釈してください。この記法を用いて
x\subseteq y\equiv\forall z(z\in x\to z\in y)
と定義します。このとき x は y の部分集合であると言います。外延公理を使えば簡単に
x\subseteq y\wedge y\subseteq x\leftrightarrow x=y
が証明できます。これは、二つの集合が等しいことを示すときに良く使う方法ですね。
x\subset y\equiv x\subseteq y\wedge x\neq y
と定義し、このとき x は y の部分集合であると言います。この記法は通常の \subset の使い方とは違いますので、慣れるまでは大変かと思いますがご容赦ください。