集合論の公理系(その 7)

ここまでは、与えられた集合に対して、新たな集合を作ることが出来る、という公理が中心で、具体的な集合の存在には言及していませんでした。しかし、今度の公理は、具体的な集合の存在に言及している、という意味では、他の公理とは大きく性質が異なります。

空集合存在公理

空集合存在公理
\exists x\forall y(y\not\in x)

このような x は外延公理(の対偶)によって一意に定まります。このような x を \emptyset で表し、空集合と言います。
次回は、ここまで紹介した公理を用いて、少し集合の性質を見ていくことにします。

空集合こぼれ話

集合論の教科書では、空集合\phi (ギリシャ文字の「ファイ」)で表していることが多いようです。しかしこれは、元々空集合を現していた記号に最も似ている写植用の文字が \phi であることから使われているものです。
竹之内脩「トポロジー」(廣川書店)によれば、これは元々はスカンジナビア文字で、「ウー」と読むのが正しいそうです。空集合の記号を「ファイ」と読んでしまうと、かなり恥ずかしい思いをすることになりますのでご注意 !