Riemann の zeta 関数(その 3・最終回)

積分表示に用いる経路

\zeta(s)積分表示と \zeta(-n)

\sigma>1 とします。このとき、複素平面内の正の実軸 \{z\geq 0\} の補集合の上で
(-z)^{s-1}=e^{(s-1)\log(-z)},-\pi<{\rm Im}\log(-z)<\pi
と定義し、右上の図のように積分経路 C を取ります(順路は反時計回り)。このとき
\zeta(s)=-\frac{\Gamma(1-s)}{2\pi i}\int_C\frac{(-z)^{s-1}}{e^z-1}dz
積分を用いて表示することが出来ます。ところが、この右辺の積分表示は、実は s\neq 1 で定義できることが分かります。これを利用すると、非負整数 n に対し
\zeta(-n)=(-1)^n\frac{n!}{2\pi i}\int_C\frac{z^{-n-1}}{e^z-1}dz
となるので、\frac{1}{e^z-1} の Laurent 展開
\frac{1}{e^z-1}=\frac1z-\frac12-\sum_{k=1}^\infty\frac{(-1)^k  B_{k}}{(2k)!}z^{2k-1}\quad(0<|z|<2\pi) … (*)
を用いると、留数定理により \zeta(-n) は、(*) における z^n の係数の (-1)^n n! 倍に等しいことが分かります。従って
\zeta(0)=-\frac12,\zeta(-2m)=0,\zeta(-2m+1)=\frac{(-1)^m B_m}{2m}
が成り立ちます。例えば
\zeta(-1)=-\frac{1}{12},\zeta(-3)=\frac{1}{120},\dots
です。この結果を
\zeta(s)=\sum_{n=1}^\infty n^{-s}
に無理矢理当てはめると
\begin{align}1+1+1+\dots&=-\frac12\\1+2+3+\dots&=-\frac{1}{12}\\1^2+2^2+3^2+\dots&=0\end{align}
という、一見成り立たない等式を得ることが出来ます。

Riemann 予想

さて、s=-2m(m\in\mathbb{N})\zeta(s) の零点でした。これを「自明な零点」と言いますが、Riemann は

\zeta(s) の自明でない零点は \sigma=\frac12 の上にある

と予想しました。実際、自明でない零点は 0<\sigma<1 の範囲にあることがわかるのですが、それらの実部は全て 1/2 に等しい、というのです。
数論とも深い関係にあるこの予想ですが、未だ解決に至っていません。しかし、自明でない零点の 1/3 以上は \sigma=\frac12 の上にある、ということまでは知られているようです。