Peano の公理
これから自然数にいろいろな構造を入れていく上で重要な、Peano の公理について説明します。
(P1) に対してある が確定する。
これは写像 が定まっている、とも言い換えられます。 のことを と書いているわけです。
(P2)
これは、(P1) で定まった写像 が全射でない()ことを意味します。
(P3)
これの意味は後ほどわかります。
(P4)
これは (P1) で定まった写像 が単射である()ことを意味します。
自然数は Peano の公理を満たす
自然数の集合 は
とおくことで Peano の公理を満たすことがわかります。実際、(P1) を満たすことは明らかですし、(P2) については
なので です。(P3) の仮定部分は、 が に含まれる無限系譜であることを意味していますから、無限系譜としての の最小性から になります。
(P4) を示しましょう。 で とします。
から、 または が成り立ちます。同様に
から、 または も成り立ちます。従って
が成り立ちますが、正則性公理により は成り立ちません*1ので、結局 のみが成り立つことになります。
以上によって、 が Peano の公理を満たすことがわかります。
数学的帰納法
自然数の元を自由変数にもつ論理式 を考えます。このとき
- が真
- が真
が成り立つならば
も真になります。これが数学的帰納法です。証明は (P3) で
とおけば示せます。実は (P3) は、この数学的帰納法のような論法が、Peano の公理が成り立つ集合の上で行える、という意味なのです。
*1:以前、正則性公理の練習問題として紹介したのですが、覚えていらっしゃったでしょうか ?