前回からの続きです。三つのステップのそれぞれを証明していきます。
(Step 1 の証明)
が を満たせば、 も を満たし、かつ だから、 として良い。すると
だから .
(Step 2 の証明)
とし と既約分数表示する。もし m , n がともに奇数とすると、
とおけば
だから も の有理数解であり
となるから、初めから m , n のうち、一方が偶数でもう一方が奇数であるとして一般性を失わない。
は有理数の平方であるから、特に は平方数である。ところが m , n , m + n , m - n は互いに素*1なので、これらは全て平方数である。したがって
は全て有理数の平方である。
(Step 3 の証明)
の取り方から
である。 と既約分数の形に書けば
であるが、ここで分母と分子の最大公約数は 4 以下であることが分かる。実際、分母と分子の共通素因子は 2 以外にはありえないから、分母と分子の最大公約数は 2 のべきであるが、仮に が偶数ならば、r , s はともに奇数でなければならないので、 は 4 で割って 2 余る数となり、 は 8 では割り切れないからである。
したがって
であるが、 だから なので となり、題意は示された。
以上で Fermat の第 45 のコメントにおける主張は示されたのですが、副産物として
方程式 は自然数解を持たない
ことが、以下のように示されます。実際、自然数解を持つと仮定すると
が成り立つので、楕円曲線 が y = 0 以外の有理点を持たないという事実に反してしまうからです。かくして Fermat 予想のうちの一つが、楕円曲線論で証明できたことになります。Wiles の解決に至るまでの Fermat 予想への挑戦の歴史は、ここから始まったのです。
*1:m + n と m - n の共通因子は 2m = (m + n) + (m - n) と 2n = (m + n) - (m - n) を割りきらなければならないので 2 しかあり得ないが、m + n と m - n はともに奇数だから、それもあり得ない。