数学・代数

Hom の左完全性の逆について(その 1)

加群の重要な定理の一つに Hom の左完全性と言われるものがありますが、私は今まで、その逆が成り立つことを知りませんでした。先日、DS 数学 BBS・2 へのとくなみきらさんからの質問によってこの事実を知り、また、その証明がAtiyah‐MacDonald 可換代数入門…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 4・最終回)

以上で準備が整ったので、本定理の証明に入る。 R を Noether 的付値環とする。このとき、任意のイデアル は、ある に一致する。したがって、R は PID である。R の極大イデアルを I = tR とする。 一般に、Krull の共通部分定理において R が Noether 整域…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 3)

付値環 R を整域とする。その商体 K の各元 に対して が成り立つとき、R を K の付値環という。付値環のイデアル I , J に対しては か かのいずれかが常に成り立つ。したがって、付値環には極大イデアルは一つしか存在しないので、局所環である。また、イデ…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 2)

Artin-Rees の補題(続き) に対する の係数比較。各 において とおいて の係数に着目すると となるが、ここで により であるから、この係数は に属する。以上で証明が終わった。 Krull の共通部分定理 R のイデアル I ,J があって、J は有限生成であるとする…

Noether 的付値環が DVR となることの証明(その 1)

しばし連載を休止してお勉強。以下、 は特に断らない限り単位元をもつ可換環。 Artin-Rees の補題 を Noether 環、 をそのイデアルとする。 の部分環 はやはり Noether 環となる。これを示すには として が全準同型となることを言えばよい。実際 に対しては …

3 日でわか(らせ)る符号理論(3 日目・夜の部)

リード・ソロモンコードと誤りの訂正(続き) 計算例 I が送られてきたとします。 となります。このことから という連立方程式を得ます。各式の両辺に を掛けて となるので辺辺加えて すなわち を得ます。従って となります。これらのことから となるので すな…

3 日でわか(らせ)る符号理論(3 日目・午前の部)

リード・ソロモンコードと誤りの訂正 さて、リード・ソロモンコード において 番目が だけ変化したとします。つまり、 ビット目に誤りが集中した場合です。このときは となるので として と を求めることができるので、誤りの訂正ができます。

3 日でわか(らせ)る符号理論(3 日目・深夜の部)

リード・ソロモンコード 往々にしてノイズというものは、特定の箇所に集中して発生するものです。そのようなノイズに対して強い検出力を持つのがリード・ソロモンコードです。 リード・ソロモンコードでは 21 ビットを使用しますが、これを 3 ビットごとに区…

3 日でわか(らせ)る符号理論(2 日目・夜の部第 2 部)

と BCH コードと誤りの訂正(続き) 2 ビット誤っていた場合 今度は ビット目と ビット目()が誤って送られた場合を考えます。このときは となります。以下、 とおきます。 故 が成り立ちます。よって は二次方程式 の解です。これを解けば が求まり、どのビッ…

3 日でわか(らせ)る符号理論(2 日目・夜の部第 1 部)

と BCH コードと誤りの訂正 さて、BCH コードを定める行列 に左から を掛けると となり、見通しが良くなります。 1 ビット誤っていた場合 BCH コード に対して、 ビット目が誤って、 が送られてきたとすると となるので、誤りを検出し、かつ訂正ができます。…

3 日でわか(らせ)る符号理論(2 日目・昼の部)

ハミングコードでは、1 ビットの誤りまでは対応できますが、万が一それ以上の誤りがあった場合にもろさを露呈します。そこで、この方法を改良して、もし 2 ビット誤っていた場合でも訂正が効くコードを作ることにします。

3 日でわか(らせ)る符号理論(1 日目)

今日から 3 日間、自身の勉強も兼ねて、符号理論にお付き合いいただくことにしましょう。 パリティビット 7 ビット*1あれば、 種類の情報を表すことができます。しかし、通常は 8 ビット = 1 バイトの単位で情報を扱うことが一般的になっています。 そこで、…

Fermat 数

を非負整数として、 の形の数が素数であるならば、 の形をしてなければならないことは容易にわかります。そこで ( は非負整数)とおいて、これを Fermat 数 と言います。例えば です。Fermat は、この形の数に関して「 は全て素数である」と予想を立てました…

素数が無限個あることの証明

今回は、ちょっと(?)変わった方法で、素数が無限個あることを証明してみます。 (正の)素数の全体を と表すことにしておきます。 整数の全体 に、次のようにして開集合系を定めます。 が開集合であるとは、 が空集合であるか、または、 が空集合でない場合は…

位数 3 の右零半群(追記)

を使うと

位数 3 の右零半群

どうやら、2 × 2 行列で表現できそうな気がしてきました。近日中に修正できるように、考え中です。

円積問題

さて、前回 が超越数であることを証明しました。この事実から、「与えられた円と同じ面積の正方形を作図すること」という作図問題の不可能性が証明できます。 与えられた円の半径は、仮に 1 であるとして問題ありません。すると、与えられた円の面積はちょう…

Fermat の最終定理に挑む(その 15・最終回)

では、n = 5 以降の歴史について、Wikipedia の記事なども参考にしながら見ていきましょう。 n = 7 の場合 n = 7 の場合の証明の途中経過として、n = 14 の場合に正しいことはディリクレ(Dirichlet)によって証明されました(1832 年)。 n = 7 を解決したのは…

Fermat の最終定理に挑む(番外編)

これまでは整数のお話でしたが、整数の代わりに適当な環 R を持ってきて、 なる「非自明」な解はあるのか ? というお話を少ししたいと思います。

Fermat の最終定理に挑む(その 14)

n = 5 の場合(続き) 前半で、 … (*) の解 から新しい解 を構成する方法を見ました。この方法をどんどん繰り返せば、 という関係から、 を素因数分解したときに現れる相異なる素因数の数を少なくできる可能性があります。このことから、 としては素因数分解し…

Fermat の最終定理に挑む(その 13)

以下、断りがなければ整数は における整数とし、、また とします。 n = 5 の場合 問題を変形・一般化し、さらに前回証明した補題 5 を使って … (*) は の整数を解に持たない。ただし は非負の有理整数、 は単数、 はどの二つも互いに素とする。 を示せばよい…

Fermat の最終定理に挑む(その 12)

五つの補題 先日の予告どおり、まずは五つの補題を示します。

Fermat の最終定理に挑む(その 11)

の整数論(続き) さて、 には、もう一つ、著しい性質があります。それは、 に対し となる が存在することです。

Fermat の最終定理に挑む(その 10)

の整数論 により、 の整数は , の形をしています。 とおくと とかけるので、*1とおけば、 の整数環は と表すことが出来ます。 さて、 故、 は単数ですが、実は の単数は、全て (n は整数)の形であることが分かります。 *1:1 の虚 3 乗根と混同しないように。

Fermat の最終定理に挑む(その 9)

一通りの準備は出来ましたので、いよいよ n = 3 に挑みます。 n = 3 の場合 問題を少し拡張して … (1) なる は存在しない ことを示しましょう。 このためには、 が で(すなわち で)割り切れないならば … (*) が成り立つことを利用します。これを示すには、 …

Fermat の最終定理に挑む(その 8)

単数と同伴数 さて、一般に、可換環 R と、その元 a に対して、ab = 1 となる が存在するとき、a を R の単数と言い、単数の全体を U(R) で表します。 また、 に対して となる単数 があるとき、a と b は互いに同伴数であると言います。 の単数 二次体の整数…

Fermat の最終定理に挑む(その 7)

以下は、あまり一般論を述べても仕方がないので具体論に入ります。 二次体 の整数環 二次体 の整数は により , の形をしていることが分かります。ここで とおくと となりますが、ここで は、よく知られている 1 の(虚)三乗根です。従って、二次体 の整数環は…

Fermat の最終定理に挑む(その 6)

以下、 の元を「有理整数」と言うことにします。 トレースとノルム 二次体 は Galois 拡大です。そこで、その Galois 群 の単位元でないものを とおきます。このとき、簡単な考察により に対して となります。この を の共役と言います。また を、それぞれ …

Fermat の最終定理に挑む(その 5)

そもそも二次体とは ? L を二次体とします。このとき、L は 上の二次のベクトル空間ですから、L の元 x は、ある (もちろん ) を用いて () と表せます。そこで、 の最小多項式を とすると のいずれかですが、このとき となるような有理数 r、及び、平方因子…

Fermat の最終定理に挑む(その 4)

n = 3 の場合(歴史) n = 3 の場合については、オイラー(Euler)によって 1770 年に証明されました。この証明には一部 gap があることがランダウ(Landau)らによって指摘されましたが、その gap にあたる部分は Euler 自身が 1760 年に証明を与えていたことが、…