一通りの準備は出来ましたので、いよいよ n = 3 に挑みます。
n = 3 の場合
問題を少し拡張して
… (1)
なる は存在しない
ことを示しましょう。
このためには、 が で(すなわち で)割り切れないならば
… (*)
が成り立つことを利用します。これを示すには、 が で割り切れないならば
と表せることを知れば十分です。
さて、上記のような が存在したとします。これらは、どの二つも互いに素であるとして構いません。もし、三数とも全て で割り切れないならば
とならなければいけませんが、これは複号をどのように組み合わせても成り立ちません。従って、どれか一つだけが で割り切れる必要がありますが、それは であるとして構いません。そこで
とおきます。すると (1) により
が成り立つことになりますが、これも問題を拡張して、任意の単数 に対して
… (2)
が不可能であることを示します。9 と は同伴(3 と が同伴だったことを思い出してください)なので、(*) により
となる必要があり、従って左辺は 0 でなければいけませんが
は m = 1 とすれば不可能です。以下、(2) が のときに解を持てば、m - 1 のときにも解を持つことを示します。
かつ
であり、(2) により左辺は で割り切れることを要するので、
とならなければなりません。ここに は で割れない整数です。また、これら三つの因数は 以外に公約数を持ちません。なぜならば、ほかに公約数があるならばそれは と の公約数でなければならないからです(仮定により と は互いに素)。
故に はどの二つも互いに素で、(2) に代入すると
を得るので、 はいずれもある整数の 3 乗に同伴な数でなければなりません。従って
で、 はどの二つも互いに素で、かつ では割れない整数です。また は単数です。このことから
となることを要します。第三列で展開すると、余因子に現れるのは
でいずれも に同伴なので、展開式を整理して
( は単数)
を得ます。再び (*) により、 に注意して
を得ますから、 となります。 ならば を改めて と置けば
となり、これは (2) において m を m - 1 に変えても解があることを示しています。これにより、帰納的に (2) が不可能であることが示され、Fermat の最終定理は n = 3 のときに正しいことが示されました。