Fermat の最終定理に挑む(その 4)

n = 3 の場合(歴史)

n = 3 の場合については、オイラー(Euler)によって 1770 年に証明されました。この証明には一部 gap があることがランダウ(Landau)らによって指摘されましたが、その gap にあたる部分は Euler 自身が 1760 年に証明を与えていたことが、1966 年になってバーグマン(Bergmann)によって発見されました。
また、後にガウス(Gauss)によって、二次体 \mathbb{Q}(\sqrt{-3})整数論を用いた別の証明方法が与えられています。

n = 5 の場合(歴史)

n = 5 の場合を最初に解決したのはルジャンドル(Legendre)です(1825 年)。こちらも、1958 年に、ナゲル(Nagell)が二次体 \mathbb{Q}(\sqrt{5})整数論を用いて、別の証明方法を与えました。

二次体の整数論

n = 3 , 5 のいずれの場合にも、「二次体の整数論」という言葉が出てきました。以下、両者の場合の証明を現代風に行いたいので、少しこの「二次体の整数論」にお付き合いいただくことになります。
体 L が 有理数\mathbb{Q} の有限次の代数拡大であるとき、L を代数と言いますが、特に二次の代数拡大であるとき、L を二次体と言います。
さて、S を可換環として、R をその部分環とするとき、S の元 x が
x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\dots+a_1x+a_0=0,a_i\in R
を満たすとき、すなわち、ある単多項式 f(t)\in R[t] の根であるとき、x はR 上整 であると言い、また、S の元で R 上整なものの全体を R の (S の中での)整閉包と言います。
そこで、二次体 L の中での \mathbb{Z} の整閉包を「二次体 L の整数環」と呼ぶことにします。この二次体の整数環は、Dedekind 環という、ある種の良い性質(ここでは、素イデアル分解の一意性が成り立つことを意味する)を持っていることが知られていますが、そこには深入りしないことにしましょう。続きはまたの講釈で。