Fermat 数

k を非負整数として、2^k+1 の形の数が素数であるならば、k=2^n の形をしてなければならないことは容易にわかります。そこで F_n=2^{2^n}+1 (n は非負整数)とおいて、これを Fermat 数 と言います。例えば
F_0=3,F_1=5,F_2=17,\cdots
です。Fermat は、この形の数に関して「F_n は全て素数である」と予想を立てました。これもかつては「Fermat 予想」と呼ばれ、かの天才・Euler も、一時はこれを真実と疑わなかったようです。
ところが Euler は、非常に驚くべき巧妙な方法で、F_5素数ではないことを示してしまいました。641=5\cdot 2^7+1=5^4+2^4 に注意すると
\begin{align}F_5&=2^{2^5}+1\\&=2^{32}+1\\&=2^4\cdot 2^{28}+1\\&=(2^4+5^4)2^{28}+1-(5\cdot 2^7)^4\\&=641\cdot 2^{28}-\{(5\cdot 2^7)^4-1\}\\&=641\cdot 2^{28}-(5\cdot 2^7+1)(5\cdot 2^7-1)\{(5\cdot 2^7)^2+1\}\\&=641[2^{28}-(5\cdot 2^7-1)\{(5\cdot 2^7)^2+1\}]\\&=641\cdot 6700417\end{align}
かくして Fermat のこの予想は否定的に解決されてしまったわけですが、だからと言って、Fermat 数が全く役に立たないかと言うとそうではありません。後に Gauss が

素数 p に対して正 p 角形が作図できるための必要十分条件は、p が Fermat 数であることである

という大定理を証明しました。また、Fermat 数のちょっとした性質を使うと、素数が無限個あることの別証明が完成します。そのちょっとした性質とは
F_n = F_0F_1\cdots F_{n-1}+2(n\geq 1)
という性質です(この性質は数学的帰納法で簡単に証明できるので、練習問題にでも…)。これを使うと F_nF_m(m<n) がある共通因数 d(>0) を持つなら、d は 2 の約数でなければなりません。ところが Fermat 数は全て奇数ですから d=2 はありえません。従って d=1 となり、相異なる Fermat 数は互いに素であることがわかります。故に、Fermat 数の素因数として現れる素数は全て異なり、かつ Fermat 数が無限にあることから、素数は無限個あることがわかるのです。