正則行列の LU 分解(その 1)
を n 次正則行列とする。このとき、 の中で 0 でないものが少なくとも一つ存在するので、A に右から置換行列 を掛けて、一般性を失うことなく として良い。そこで
とおく。ただし である。すると
となるので、この行列から 1 行目と 1 列目を除いた (n - 1) 次行列に対して、帰納的に同じ手順を繰り返すと、対角成分が 1 のある下三角行列 M と置換行列 P があって
と出来る。ただし U は対角成分が 0 でない上三角行列。 はやはり対角成分が 1 の下三角行列だから、結局
と下三角行列と上三角行列の積に分解できたことになる。これを正則行列の LU 分解という。P を固定すれば、この分解は一意であることは簡単に証明できる。実際
とすれば であり、左辺は下三角行列、右辺は上三角行列だから、両辺は対角行列でなければならない。特に左辺は対角成分が 1 だから単位行列でなければならず、このことから を得る。したがって も成り立つ。
正則行列の LU 分解(その 2)
を n 次正則行列とする。このとき、 の中で 0 でないものが少なくとも一つ存在するので、A に左から置換行列 を掛けて、一般性を失うことなく として良い。そこで
とおく。ただし である。すると
となるので、この行列から 1 行目と 1 列目を除いた (n - 1) 次行列に対して、帰納的に同じ手順を繰り返すと、対角成分が 1 のある上三角行列 V と置換行列 P があって
と出来る。ただし L は対角成分が 0 でない下三角行列。 はやはり対角成分が 1 の下三角行列だから、結局
と下三角行列と上三角行列の積に分解できたことになる。これも正則行列の LU 分解という。P を固定すれば、この分解もやはり一意であることが上記と同様、簡単に証明できる。